2018年10月17日 (水)

ハノーヴァーWFFS血統一覧(仮)

Hano_4

 まだわからない部分もずいぶんあるけど、作りたくなって作ってみた。

 Pik Asの系統については、あやしいのはPik Bube1からかもしれない(あやしいとすれば)。RafaelにはFrioso2の血統も入ってるし、Don Vinoに関しては、母父トラケナーのConsulに疑わしいフシがあるから(この一覧に祖先が見当たらないキャリアDon Fredericoの母父がやはりConsul)。一方で、Pik Bube1から血を引くBlue Hors Venezianoは、父がシロのヴィヴァルディ、母父もたぶんシロのドナホールだから、母母のラインからきたとしか思えない。もっとも、これだけではまだ証拠不十分だけど…。

(ドナホールをシロと仮定するのは、これがクロだったら今までにWFFSの罹患馬が隠しようもなくどっさり見つかってると思われるから。それくらいドナホールは膨大に使われているし、直子のスタリオンも多い。しかし、全否定する根拠はない…検査結果を見るまでは(直子のDon Schufroは、ブルーホースの検査でシロと出ている))。

 同じことはFrioso、Frioso2の系統にも言える。彼らからキャリアの子孫まで、あまりにも代を重ねすぎているきらいがある。この一覧がもし正しかったとしたら、キャリアにいたるまでのスタリオン、―錚々たるものだけど―、は、すべてキャリアだということになるが、ちょっとそれはありえないことのように思われる(とはいえ、ありえてもおかしくはない)。

 これらに引き換え、疑う余地なくキャリア一族と思われるのは、Cor De La Bryere、Calypso2の血統。直系の子孫から、代をそれほど重ねることなく、つぎつぎにキャリアを輩出している。なお、この血統と、Frioso2の血統は、ショー・ジャンプの馬の名門血統でもある。

 それにしても、今春ショッケモールは「ドイツでWFFSの罹患馬は出ていない」のを建前にスタリオンの検査を実施しなかったけど、これほど怪しい血統、ことにCalypso2の系統をさかんに用いながら、ハノーヴァー種に罹患馬が全然出なかったとは到底信じられない。今年のWFFS騒動の発端を作ったのは北米のスタッドだったけど、当のスタリオンはまさしくハノーヴァー種(Frioso2の系統)だった。

 ドイツのハノーヴァーのスタリオンの全頭検査を実施したら、ハッキリ言って、目も当てられない結果になる恐れが十分にある(わかりきっているから一覧に入れなかったけど、Lauries Crusador、Londonderryのラインもキャリア一族。…で、今気がついたけど、母父がこの系統で、キャリアであるSarotti Mokka Sahne、父がFrioso2系のSolimanだった。Solimanは例のWFFS騒動の嚆矢となった北米のスタリオンの父…WFFSの遺伝子は、こちらの影響だったかもしれない。もしそうなら、Solimanおよびその父Sandro Hitがキャリアである可能性は非常に高い)。

 ハノーヴァーには何だかかなり煮詰まった血統が多いように思う。同じ馬の名を、一頭の血統表の中に繰り返し見ることがしばしばあるし、同じ馬から出た血筋を父方・母方両方に持つ馬もいる。Pik Bube1とかCalypuso 2とか数字がついている馬は全兄弟のスタリオンがいるということだし、子孫をその母/祖母に交配するいわゆる戻し交配が血統中に見られる馬さえいる。遺伝病であるWFFSのキャリアが、まずハノーヴァーに見つかったこともわかる気がするし、ハノーヴァーを作り出したドイツが、スタリオンの検査に消極的なことも、わかる気がする。同じ系統、同じ血統が繰り返し、また重ねて交配されている例が非常に多いだけに、そのなかにキャリアのスタリオンが一頭でもいれば、たちまちその遺伝子が蔓延するようになるのは当然のことだろう。こう考えると、「ハノーヴァーはWFFS罹患率が高い」とする調査は、対象となった頭数こそ少なけれ、的を射ていたと言えそうである。

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2018年10月15日 (月)

あやしいハノーヴァー種

 ドイツのスタリオン・ステーションに繋養されているハノーヴァー種(ドイツ原産の馬種、主に馬術用)の有名スタリオンにとうとうWFFSが発覚したばかりの折も折、ユーロドレッサージュで「素晴らしいハノーヴァーの血統の歴史」みたいな長大な記事が掲載されました。今度行われるハノーヴァーのライセンス取得試験に向けて、みたいなスタンスだけど、どう考えても「ハノーヴァーの血統には気をつけろ」的警告にしか見えない。

(WFFSは遺伝病のひとつ、キャリア同士の交配で25%の確率で新生児に致死的身体異常をもたらす。今春アメリカでニュースになり、その後欧州でも騒がれて、オランダやスウェーデンは登録スタリオンの強制検査を敢行したが、デンマークは書面の注意のみ、ドイツはほとんど無視を決め込んだ。FEIの兄弟組織であるWBFSHはというと、12月の国際会議まで問題を棚上げ(だから組織としてはまだほとんど何もしていない)。今ごろドイツが検査を始めたのは、この12月の会議が念頭にあるのでしょう。)

(なお、日和見デンマークでも、ブルーホースやヘルグストランドのような有名スタッドは自主検査と結果の公表をしています(後者は最初無視の構えだったが)。しかしドイツではショッケモールはじめほとんどのスタッドが今だに知らんぷり。「牝馬を検査してから配合すればいいだけの話」というスタンスです。)

 私もいくらかWFFSが発覚したハノーヴァーやその血統の入ったスタリオンの血統表をネットでいじってみました。

まず、ユーロドレッサージュの記事によると、ハノーヴァーのブラッドラインは、

1.古いオリジナル血統(Eライン、Dライン、Gライン。馬名の頭文字にそれぞれE、D、Gがつく。なお、始祖の頭文字を産駒につけるのは他の血統でも同じ。) 
2.第二次世界大戦後、導入された血統 
3.古い血統をベースにした新しいオリジナル血統 
4.近年他種から導入された血統
 の4つらしく思われる。これは主にスタリオンの出入りから分けたもので、実際は複雑に入り混じってると思うけど。

 2.にはトラケナーやサラブレッド、4.にはホルスタインやフランス産馬がよく見られる由。

 キャリアの発生したブラッドラインの根幹馬、その番号、そして判明したキャリアの名を挙げると、

・Lauries Crusador(3)…Londonderry, London time, Blue horse Londoner(この3頭は親、子、孫)。ほかBlue hors Emilio、Don Index、Sarotti Mokka Sahne 。

・Calypso II(4、父はセルフランセ、自身はホルスタイン)…Connaisseur、Balou Peggio、Chivas、Comte、Edward、Total US(3代母の父が直子Contenderの子)。この系統はジャンプの名スタリオンも出しており、ジャンパーも検査することになったら、えらいことになりそうです。

・FriosoⅡ(4、フランス産サラブレッド)(遠祖なのであいまいだが)…Don Romanov、Skovens Rafael、For Sure、Guardian S

・Pic As(2、サラブレッド)(これも遠祖だが、孫くらいになると近い)…Don Vino、Skovens Rafael、Botticelli、Connaisseur、Blue hors Veneziano

 ついでに、オランダ温血種でのキャリアに多い(Kossはヘルデルラント種だけど、オランダ温血種のライセンスを持ってる)のは、

・El Corona(ホルスタイン)…Apache、Habanna、Koss、Everdale。Guardian SはEl Coronaの母父Dolto(トラケナー)が、ReginoにはEl Coronaの父Amorが入ってる(どっちがシロかクロかわからない→ガーディアンSにはフリオーソ2も入ってるから、ドルトはシロかな?)。

(あと、トラケナーだけどConsulもあやしいかも。これ以外に、キャリアのDon Fredericoに思い当たる血筋がないし、キャリアのDon Vinoの母の父がこれ)

 遠祖たちは、根幹種牡馬みたいなものだから、どの馬をたどっても行き着く、という部分もあり、疑いをかけるには根拠が薄いんだけど…むしろ他馬と交配されたその子や孫の血統がアレなのかもしれない。あと母馬の姉妹関係とかも気になる。

 ハノーヴァーの交配は、かなり近親交配が目立つ…ドナホールなんて、へたすると一頭に3回くらい入っちゃう。健康によくなさそう…(ドナホールがキャリアだったらすごいことになるだろうけど、しかしまだ可能性は排除できないな。)

 もう少しキャリアが公表されたら、あやしい候補を絞れるのだけど。なお、ハノーヴァーの歴史的血統について興味のある人はこれをどうぞ。
 ついでに、まだ発表はないが、まずキャリアと思われるスタリオン。
 
・Contendro、Conteur、Continue、EmbassyⅠ…前三者は頭文字でわかるようにCalypsoⅡの子孫たち。EmbassyⅠはEライン出身だけど、祖母の父がCalypsoⅡ。
大種牡馬だけに、遺伝力が強いようです(しかも重宝されて、全兄弟とかもいっぱいいるみたい)(カリプソ2の父もキャリアだったみたいだが、これがまた遺伝力が強く、また重宝されてて…(´Д⊂グスン)…

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2018年10月14日 (日)

ロンドンデリー、WFFS陽性発覚

 今春ブリーディング界で大騒ぎになったWFFS(温血種仔馬脆弱症候群)問題ですが、オランダやスウェーデンが国を挙げてスタリオンの検査を行ってウェブ上でその結果を公表したのに対し、徹頭徹尾無視を決め込んだドイツ、その有数のスタリオン・センターであるツェレ国立スタッドでこのほどようやっとWFFS検査が行われ、人気スタリオン・ロンドンデリー号(23歳、父ローリーズクルセイダー)をはじめとする5頭が陽性であることが発表されました。

 ツェレ国立スタッドは、国有としてはドイツ最大のハノーヴァー種のスタリオン・ステーションの由。キャリアが判明したなかで、ロンドンデリー号とロンドンタイム号は父子関係。さらに、デンマーク有数のスタリオン・センターであるブルーホース・スタッドが6月に自主検査でキャリアを公表した3頭のうちの一頭、ブルーホース・ロンドナー号はロンドンタイム号の産駒です。ロンドンデリー号は2013年度のハノーヴァー種スタリオン・オブ・ザ・イヤーで、当時の登録産駒数は2000頭を上回るということ。

 ツェレでキャリア判明したなかのもう一頭の有名種牡馬・ドン・フレデリコ号(21歳、父ドナホール)は2012年のハノーヴァー種スタリオン・オブ・ザ・イヤー。12年当時で登録された産駒は2500頭以上、そのなかにはヤングホース世界チャンピオンも含まれています。

 ハノーヴァー種のスタリオンは、何となく他種と隔絶されているような感じがあり、たとえばブルーホース・ザック号なら「デンマーク温血種だな」、ヴィヴァルディ号やアパッチ号なら「オランダ温血種だったっけ」とすぐ見当がつくのですが、ロンドンデリー号は名前は聞いたことがありながら、ハノーヴァー種とは知りませんでした。オランダで大人気のスタリオン・トトJr号は、父はオランダ温血種のトーティラスながら母方の血統はすべてハノーヴァーで、自身もハノーヴァー種。トラケナー種ほどではないけれど、ハノーヴァー種も相当血統仲のハノーヴァー濃度が高くないと、ハノーヴァーとして認定されないのかもしれません。

 今春、いろいろな馬種別にWFFSの罹患率を調べた結果を見たことがありますが、ハノーヴァーは目立って罹患率が高かったです。まあ、そのデータは調査した馬の絶対数がとても少なかったので、あまり参考にはならないかもしれませんが、言い方を変えれば、そんな少ない調査数だったにもかかわらず罹患馬が見つかったということで、実際はほんとうにハノーヴァー種のWFFSキャリア数は他と比べて多いのかもしれません。もしそうなら、上に述べたような閉鎖的な血統登録が原因かもしれませんね。

 くだんの表。

https://www.dehoefslag.nl/wp-content/uploads/2018/06/tabel-wffs.png

 ハノーヴァー(Hanoverian)と、ハノーヴァーと本質的には同じと言われるウェストファーレン(Westfalen)が1位、2位なのがどうもね…

 …今、過去記事を見直してみたら、WFFSキャリアのハノーヴァーのスタリオン、たしかに多い!しかも、ドイツは馬種ごとの管理組織や大規模なスタリオン・ステーションによる全頭検査は未施行で、以前に発覚したのは国外のスタリオン・ステーションやオーナーによる自己検査によるものだから、実際数はさらに多いはずと思われる。

・ロンドンデリー(父ローリーズクルセイダー、子ロンドンタイム、孫ブルーホース・ロンドナー)
・ドン・フレデリコ
・コネセール
・フォーシュアー
・トータルUS

 また、両親のいずれかがハノーヴァーというのが、

・ボッティチェリ(父がハノーヴァーのベネトンドリーム)
・ブルーホース・エミリオ(母がハノーヴァー、母の父ローリーズクルセイダー<ロンドンデリーと同じ>)

 ついでに、オルデンブルグ種も、かなり怪しい気がしてきた…

・ブルーホース・ヴェネツィアノ

 ドナホール(オルデンブルグ、しかし父はハノーヴァー、超有名スタリオン)が臭い…

・ボッティチェリ(母方と父方で、それぞれドナホール×Dunjaの娘の組み合わせ)
・コネセール(母の父ドナホール)
・フォーシュアー(5世代中にドナホール×3)
・ドン・フレデリコ(父ドナホール)
・ブルーホース・ヴェネツィアノ(父ドナホール)
・スコヴェンズ・ラファエル(祖父父ドナホール…ただし祖父ドン・シュフロは検査結果シロ)
・スプリングバンクⅡ(ラファエルの子、母祖父ドナホール…母父はデニーロ)(スプリングバンクはドナホールの3×4になるわけ。ついでにローディアマントも3×3)
・トータルUS(母がドナホールの3×3<サー・ドナホールとドン・シュフロ>)
・ハバンナ(父ヴィヴァルドの祖母父)

 ドナホールだらけ。それにしても煮詰まってるな…
 これでほんとにドナホールがクロとなったら、ドイツが頑として調査を拒んだ理由もわかるというもの。

 また、ホルスタイン種のエル・コロナはほぼ間違いなくキャリア。

・コス(ヘルデルラント種だけどオランダ温血種のスタリオンとして大成功、その父)
・エヴァーデール(祖母の父)
・アパッチ(祖母の祖父。アパッチは異父妹がキャリアだから、母系の遺伝のはず)
・ハバンナ(父ヴィヴァルドの母父モンテクリストの父。モンテクリスト、ヴィヴァルドもキャリアの疑い濃厚だな)

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2018年10月11日 (木)

ゲンナジー・ヤーニンのゴールデン・アイドルともひとつ

 ゲンナジー・ヤーニン(1968?〜)のラバヤデールのゴールデン・アイドル。このアイドルは「偶像」の意味で、ピチピチの娘のことじゃありません^^;王女ガムザッティの婚約式に花を添えるため披露される、さまざまのダンスのうちの一つですね。コスチュームが全裸の金粉塗りみたいに見え、一見いかにも前衛的でいかがわしげですが、どうして、すごいですよ。

 うまっ。  

 もうひとつ、ファラオの娘から、ヴァリエーション。古代にタイムスリップした教授がファラオの娘と恋するという、なんかの漫画を思い出させるストーリーのバレエ^^;、これはいっしょにタイムスリップした教授の従者の滑稽ダンスみたい。

 うーまっ。

 この人は道化役とか三枚目役の専門だった(背が低かったからとか?)みたいだが、いやもったいない。王子とかをさせてもすごかったろうに。

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2018年10月10日 (水)

黄金時代・タンゴ

 バレエ『黄金時代』のタンゴ。これはガラ(いろんなバレエからいろんなシーンとかダンスを持って来て、集めて、お楽しみ会みたいに上演するもの。まあバレエ一日お祭り?有名ダンサーもよく出るので、ファンも大喜び)から。踊ってるのはカプツォーワとドミトリーチェンコ。

 これはどんな筋のバレエかというと、黄金時代というナイトクラブだか酒場だかダンスホールだかがあり、そこの踊り子が地元の漁師の青年と恋仲になって、割り込んでくるギャングの親分とかその情婦とかの横恋慕/嫌がらせを乗り越え、愛を成就しました…というものらしい。共産時代のお約束ストーリーの由で、すでに結果がわかっているようなもので、筋としては大したことはないが、しかしロシアの人たちが見れば細部にいろいろ思い当たるところがあるのか、なかなか人気があるらしい。

 で、カプツォーワは踊り子のリタ役、黒服のドミトリーさんがギャング役。リタは、すでに漁師の恋人がいるから、迫ってくるギャングが疎ましいのですね。だから気の乗らない、冷めた表情で踊っているわけです。―まあ、それにしては一糸乱れず息が合ってますが^^;

 ずっと以前、この動画をチラ見した時は、全然タンゴじゃないじゃんつまらないや、とすぐ見るのを止めたのですが、いま腰を据えてよく見ると、あら、悪くないですね〜。バレエだからタンゴじゃないし、そうかといってふつうのいわゆるバレエでもないけれど、でもいいや。

 「全身可憐なカプツォーワだから、色っぽい役はちょっと…」とか思ったりしてすみません。この人、カルメンとかニキヤでも大丈夫だ…というか、それ、見たいぞ〜

 ところで、カプツォーワ、この一ヶ月後にボリショイシアターで踊ったのが16歳のオーロラ姫…またこれが似合ってて可愛いのなんの。美人は得、というけれど、そしてそれもそうだろうけど、それらしい佇まいとかしぐさとか雰囲気とか、やっぱり何より演技力がものを言ってるんじゃないかな…

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2018年10月 8日 (月)

黒鳥の誘惑、三者三様+α

 白鳥の湖に、こんなおもしろいパドドゥがあるなんて知らなかった^^

 悪魔の娘オディールが、白鳥オデットに恋する王子ジークフリートを誘惑する場面。パドドゥはあまり好きじゃないのだけど―延々踊るばかりだから―これは合間合間に演技がはさまるので面白い。
 
 黒鳥は王子と踊りながらも、王子が熱を上げてくると不意に拒否したり、かと思うと大胆に王子に身を投げかけたりして、誘惑の限りを尽くす。これじゃ純情な王子、たまらないよな…

 

 これはニーナ・カプツォーワの黒鳥。かわいらしいカプツォーワには向かない役だと思ってたけど、どうして、大胆に誘惑しています。この人、ほんとに役者だな…
 小悪魔ふうなんだけど、しかしキャッキャした小悪魔じゃなく、冷静な小悪魔。可憐なんだけど、すごく悪い妖精。拒否のしかたがピシャッとしてる。白鳥の真似(だと思う)をして、床に伏せて翼を動かしつつ王子をじっと見るようすは、「ほら、あなたこれが好きなんでしょ?」という感じ、実に意地悪。しかも王子がたまらず駆け寄ると、すかさずサッと腕を突き出し「ダメよ!」と拒絶…そりゃ、王子も、わけがわからなくなって、ふらふらになるわ…

 で、王子が隅っこで苦悩したり懐疑したりしてるあいだ、父の悪魔―何だかお洒落なコーチみたい―のところに戻っては、こそこそ悪いアドヴァイスを受けているのがナイス。「パパ、あいつだいぶ参ってきたわ」「よし、じゃ次はもっと大胆にいってみろ」みたいな^^;

 なお、これはボリショイじゃなくタタール国立劇場?か何かでの演技、音楽家との共演を兼ねてる?みたいなので、音が素晴らしく綺麗。

 これはウリヤーナ・ロパートキナの黒鳥。いきなり踊りが絶え入るばかり美しいので、別に誘惑しなくても、王子が勝手にひとりで落ちるだろうから大丈夫と思わせます^^

 この黒鳥は、誘惑的というよりも、何だか王子に興味がないような黒鳥。二人で踊っていても何だか非協力的な感じで、王子が腰に手を回してきても「あら、いたの」みたいな様子で、拒否のしかたもあまり熱がなく、王子を眼中に置いてないみたい。そのくせ要所要所できちんと誘惑してきて、怖いくらい綺麗な黒鳥…
 ここでは悪魔パパも、歩きまわったり、黒鳥を王子から引き離してみたりと、なかなか動き回ります。王子を操るためだ、とする解説があったけれど、まあこのロパートキナの黒鳥に関しては、パパの助けはいらないでしょうな。

 定番中の定番、スヴェトラーナ・ザハロワの黒鳥。これは…綺麗です。

 うーん、悪くないけど、もっと演技がほしい、まあ好みの問題だけど。ただダンスするとか、オデットのようにそこはかとない悲哀とかほのかな愛情とかならいいのだろうけど、この場面みたいに表情と内心が矛盾するとか、笑中剣ありとか、腹黒い策略を楽しみつつ実行とか、そういう表現になるとちょっと食い足りない…

 ここでの悪魔パパは、どっかりと椅子に腰掛けたまま動きません。娘が王子を落とすのを確信している…というより、ザハロワの動きをお客さまに堪能していただくため、あえて後ろに控えているのでしょうね。
 最後のほうで、黒鳥が片足立ちしたままで王子と結んでいた手を互いにパッと離すところがあるのだけど、ここが変にもたついて、なかなか手がほどけなくて、やっとほどけた時は思わず客席から拍手が起こってました^^;

 で、上3者とは振り付けがだいぶ違うけど、マリアネラ・ニュネツの黒鳥も。

 ビックリするほどあざとい黒鳥。王子が、―当時、このペアはほんとにカップルだった由だけど―、情熱的に手を取ろうとするたびに、「あら、手が」みたいな調子で笑いながらヒョイと引っ込めてしまう。うろたえて傷つく王子の表情がラテン系でなかなかよい。この黒鳥は、拒否こそしないけど、存分に男をもてあそんで面白がるタイプです。
 もてあそばれる王子、可哀想に…と言いたいところだけど、この王子、顔つきが大柄で、表情が派手なので、悪いが見ていてとても愉快^^;

 パパ悪魔もここでは大活躍、娘に耳こすりをしたり、いかにも手で遠隔操作ぽい動きをしたり、舞台をのし歩いたり、王子から黒鳥を取り上げて踊ったり…途中、突然悪魔の手下ども(黒服で立ち尽くしている人たち)がザワザワと一斉に立ち上がり、舞台に詰め寄るようなシーンがあったので、何事かと思いましたが、どうやら窓の外で王子に呼びかけようとする白鳥オデットの妨害に入ったようです。

 ちなみに、このペアはコーダ(このシーンの一番最後)もとてもよいので、是非ご覧を。とことん男をじらし抜く、悪い黒鳥ですよ^^
 総じてここの『白鳥の湖』はお芝居っ気たっぷりのようですね…何だか全幕見たくなったな〜

  私はちょっとしたしぐさや表情から、えもいえぬ空想がいろいろと紡ぎだされてくるようなバレリーナが好み。「こんなことを企んでるな」「こんな気持ちをこめているな」などと揣摩憶測しながら見ているのが楽しい。それってバレエの楽しみ方?と言われるとどうもわからないけど^^

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2018年10月 3日 (水)

好きなバレリーナ

 最近バレエをYouTubeで見るのが好きになり、しかしまったくのシロウトだから、何でも自分の気に入ったバレリーナが踊ってるのを探しては何度も繰り返し見、ウットリとしている。きちんとしたバレエ・ファンから見れば、はなはだけしからん見方だろうけど、思うに、シロウトをも動かす魅力を発揮しているという点で、私の愛好するバレリーナたちはやはりただ者ではないのだろうとも思う。

ニーナ・カプツォーワ
 踊るフランス人形。
 どうして、この人に関する情報が日本じゃあまり見つからないんだろう。見つかっても「”青い鳥”のが可愛かった」ばっかり・・・そりゃ、可愛いけど。
 すごい演技派、すごい可憐さ、手や足や肩での表現力は天下一品。この人、お芝居の世界とかでもやっていけそう…ポワントでの動きには独特の可愛らしさあり。
 元気で芯がシッカリした女の子役がはまるけど、薄幸の美少女とかの役もアリ、コミカルな演技までこなし、いわゆる「キャラ立ち」する役にうってつけ。
 ただ、あまりにも可憐な容姿と雰囲気ゆえ、貫禄ある大人の女性の役とかは似合わないかも…まあ、演技力で相当はカヴァーしちゃうと思うけど。
(追記:この人の黒鳥を見て、考えが変わりました…これならカルメンでも、瀕死でも、いけそうだ〜)

マリーヤ・アレクサンドロワ
 踊るギリシャ彫刻。
 この人のガムザッティを見て、初めて「威風あたりを払う」とはどんな感じかがわかった^^;
 威厳・迫力がただならない。そして、技や動きがみなバレエの教科書から出てきたかのよう…足が鋼鉄でできてるんじゃないかと思うほどの安定感とバランス、そして力強さ(もっとも、まだこの人の動画はまだほんのちょっとしか見ていないのだけど)。
 演技力も相当…まあ演技力に乏しい人から威風が感ぜられるわけはないけど。ガムザッティvsニキヤの”修羅場”をダンスなしの総マイムで演じていたけど、ほんとうに怖かった。
 でも、この人はやっぱり堂々たる女王とか誇り高い王女とか、リーダーシップのある役どころが似合いそう。この点、カプツォーワとは反対かも。

ウリヤーナ・ロパトキナ
 踊る女神さま。
 生粋のダンサー。バレエの枠を超えて、正真正銘の踊り手。この人なら、ストリート・ダンサーとしても生活できそうだし、日本舞踊だって踊りこなすだろう。だから演技力や表現力もすごいものがある(ガムザッティのアレクサンドロワ相手にニキヤで修羅場の演技は、ほとんど女優張り)。
 有名な「瀕死の白鳥」なんか、ほとんど哲学的と言いたいような深さ。その一方で、肝を奪う「カルメン」のセクシーさやカッコよさ、「白鳥の湖」の優婉典雅さ。何でも踊れるし、踊りたそうに見える。この点、アレクサンドロワは「カルメン」は残念な感じだったし、―彼女はやっぱりバレエバレエしたのがいいのだろう、―カプツォーワはだいたいその動画がなかったけど、まあそのほうがいいような気がする^^;(後記:いや、カルメンでもいけるぞ!黒鳥であれだけの悪女っぷりなら)。
 この人の場合、「何の役か」よりも、「どんな踊りをする役か」のほうが重要かも。

 こうして見ると、私は演技が達者なバレリーナが好きみたい…それと、何か飛び抜けた個性のある人。
 シロウトだからおのずとそうなる、というのももちろんだけど、仮にバレエについて相当詳しくなったとしても、この好みは基本的には変わらないんじゃないかな…
 まあ、まだ他にも気になるバレリーナもいるし、趣味としては、今がいちばん楽しめる時かも^^
 

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2018年10月 2日 (火)

グラン・パ・クラシック、マリア・アレクサンドロワ

 グラン・パ・クラシックは、グラン・パ・ド・ドゥだけの作品。ストーリーも他の登場人物もなく、ペアの男女が、あるいはいっしょに、あるいは入れ代わり立ち代わり一人ずつで踊るだけ。

 マリア・アレクサンドロワのソロは、5分10秒過ぎあたりから。グラン・パ・クラシックはそもそも大変に難儀な、ハードな演目らしいのだけど、なるほど、シロウトが見ても、見てるだけで筋肉痛になりそうな動きの連続。

 が、この人の安定感は只事でない…この人の足、硬木か鉄でできてるんじゃなかろうか^^;

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2018年10月 1日 (月)

Sleeping Beauty

 なんて悲しそうな…つД`)
 「眠れる森の美女」の第二幕の、オーロラ姫のヴァリエーション。

 16歳の誕生日(”美女”というには若いな^^;)にオーロラ姫が嫉妬深い邪悪な妖精によって100年の眠りにつかされるまでが第一幕。第二幕は100年経って王子さまが善なる妖精の導きで眠れる城に入り、オーロラ姫をよみがえらせる。で、この動画(途中からだけど)は善の妖精が王子にオーロラ姫の幻影、―本人は城の中で眠っているので―を見せる場面で、踊っているのはニナ・カプツォーワ。むう、オーロラ姫そのものの容姿だ…

 最初見ると、回転のあとのキープ?ポーズをキメる部分がなんだか危なっかしく、技と技の繋ぎ目もいまいちぎこちない感じで、残念な踊りに見えるけど、何回か見ているうちに、その表現力に揺さぶられてくる。この人は腕とか肩とか足とかでするしぐさがほんとうに表情豊か、かつ可憐。あの、なんと悲しそうな、そして美しい佇まい、こんな目で見られたら、それは誰だって荒れ朽ちた呪いの城にだって乗り込まずにいられまい。

 思うに、これは眠りという牢に閉じ込められて、一生懸命出口を探すけれど見つけられず、悲嘆と絶望にくれる姫の心中を表しているのだろう。同じ所を行ったり来たり、ぐるりを回ってみたりするのがそう感じさせる。後ろにいるたくさんの人は…私が思うに、きっとお城にからみついている緑の木のツル^^;

 たいそう有名なザハロワも同じ場面、同じダンスをしているのだけど、そしてたしかに回転とかキープとか、前半の踊りはそつがなく、カプツォーワ以上(ポワント後ろ歩きは別ね)と思わせるけど、後半はむしろカプツォーワが上。何より表現力。あの、片足を上げつつ行き来するところ、操り人形みたいで、いかにも幻影ぽい。そして、いかにも、ここを逃れたいのだけどどこにも出口が見つからない、という感じが出ている。さらに、全身にあふれるあの悲しさ…ザハロワにはこれがないなあ、まあカメラの撮り方にもよるだろうけど。

(それはそうと、バレエは伝統を重んじるかもしれないが、多少は踊り手に合わせて衣装を調節するくらいしてもいいんじゃないかと思う。ザハロワのような長身で、手足も長いバレリーナには、チュチュにしても丈を長めにするとかデザインをどうとかするとか工夫しようがあろうに…何だかツンツルテンの借り着を着てるみたいで、せっかくの踊りがもったいない。)
 
 この場面、音楽もいい…絶望と希望を綯い交ぜるような、しっとりとしてしかも可憐なメロディー、これも一度聞くとけっこう頭の中を回って出て行かない^^;チャイコフスキーはすごいなあ…

 追記:もっと長いやつ発見。

 こちらはパ・ダクション(お話の筋を<ダンスで>説明する部分、まあストーリーの山場みたいなものか)のほとんどかな。何だかオロオロしている男性が王子、紫の服の人が善のリラの精、たぶん。

 王子、王女と仲良く踊ってるじゃん、と思うけれど、これはあくまでリラの精が見せる幻影という設定なので、虚しい…

 パ・ド・ドゥ(ロシアなのになぜ用語がフランス語?と思うのだけど、バレエはフランス発祥だったのね)も綺麗だけど、最初の動画では途中からだったオーロラのヴァリエーションが頭から見られて嬉しい^^
 こちらの最初からのヴァリエーションでも、ちょっと動きがギクシャクしててもの足りないな…と思ったけど、あるいは、人間じゃなくて幻影、―魂のない人形みたいなもの―という意識で、わざとそのように動いているのかも。たしかに、幻影が本物みたいにピチピチして人間くさく踊ったりしたら、この場面の幽玄な雰囲気が減じるものな…

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2018年9月28日 (金)

ラ・バヤデール

 「ラ・バヤデール」、マリア・アレクサンドロワのガムザッティ。

 入場の場面。「王女さまの御成!」と鞭を鳴らし、孔雀の扇?を持ってステップするお付の者どもがカッコいい。

 でも、ガムザッティがもっとかっこいい^^

 この人、足が棒みたいにピンっと伸びるな…

 これはちょっと怖い。ソロルをめぐって争う王女ガムザッティと舞姫ニキヤ(これはちょっと古い動画)。

 ニキヤはロパトキナ、アレクサンドロワに勝るとも劣らない演技力・表現力。おかげでこのシーンがいっそう怖いものになっています^^;

 ニキヤに顔を上げさせて、「あっ、こいつ私より美人」とグッと呑み込むところ、いったん激昂しながらはっと我に返り恥じ入るところ、ナイフを突きつけられて丸くなって怯えるところ、その後逃げ出すニキヤに居丈高に迫るところ、まことに見事なマイム。

 これは素敵。実は、アレクサンドロワのを見る前にクリサノワのを見て(それまでガムザッティのバリエーションは見たことがなかった)「ガムザッティのって、有名だけどあまり面白くないな」と思ったのだけど、アレクサンドロワのを見たら、コロリと参りました。端正で、威厳があり、美しく、まさしく王女の舞。うーん、クリサノワのは小娘の舞…

 全員が重厚な衣装をつけているのに、一人だけチュチュで踊るというのも、考えてみれば違和感があるけれど^^;

 アレクサンドロワは、バレエの教科書みたいですね…この人は、たぶん似合わない役というのがいちばん少ない人じゃないでしょうか。何でもひととおりはこなせそう。力強いし、優美さもある。この最後のバランスのくずれなさなんかすごい。けど、このガムザッティを見たら、やはり迫力や威厳のある役、キツめの王女や女王が似合いそう。でも、残念ながらケガ(バヤデールの公演中の由)がもとで去年退団しちゃったとのこと…まあそれでも時々は踊るのだろうけれど。

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