2009年11月 8日 (日)

江城子(浣花渓上見卿卿)

江城子   張泌

浣花渓上見卿卿
臉波秋水明
黛眉軽
緑雲高綰
金簇小蜻蜒
好是問他来得麼
和笑道
莫多情

ながれのきしに みしは
あきらかな まなこ
まゆうすく ひき
たかまげに さす
こがねなす あきつ
ゆうをこして よべば
ほほえみ いわく
まよえる なかれ

 張泌は生没年不詳、出身地不詳の人のようだが、五代の詞を集めた『花間集』には蜀の詞人の間に作品が伍しているようだから、たぶんその頃の蜀の人なのだろう。詞風から察すると、なかなか風流多感の人だったようで、ちょっと遊冶郎的、つまりプレイボーイ的要素もあったような、ちょいと粋なお兄さんだったように思われる。
 この詞の「浣花渓」は、蜀の景勝地。唐代に杜甫がその近くに寓居したので知られている。

2009年10月27日 (火)

乾荷葉(乾荷葉)2

<小令>南呂 乾荷葉      劉秉忠

乾荷葉
色無多
不奈風霜剉
貼秋波
倒枝柯
宮娃斉唱採蓮歌
夢裏繁華過

しもに
くたせる
すがれた はちす
みのもに
うかみ
さりぬるなつの うたごえを
ただゆめに みるばかり

 前回にも出した連作「乾荷葉」のなかのもうひとつ。表現はなかなか写実的だが、型にはまって美辞麗句的なのより新鮮でよい。「宮娃」というのはおそらく宮女、いわゆる御殿づとめの美しい女中たちのこと。いにしえの中国では、ハスの季節になると、花も摘んだろうがその実―ハスの種―をとるのが重要な作業であったようで、とくに南方の風物詩としてよく詩文に詠じられている。ハスの種は、食用にもなるのだろうが、きっと漢方薬の原料にでもなるのだろう。とにかく、南国美女たちが舟に乗って水遊びなどしつつハスの花の間を行き来する光景は、詩の好材料としてよく採られたのである。
 この曲は、そのような夏の栄華のひとときをすでに終え、ぼろぼろに色あせたハスに哀惜の情をよせたもの。過度の悲しみでなく、ロマンティックの程度でとどまらせたところが好ましい。

2009年10月11日 (日)

乾荷葉(乾荷葉)

<小令>南呂 乾荷葉     劉秉忠

乾荷葉
色蒼蒼
老柄風揺蕩
減了清香
越添黄
都因昨夜一場霜
寂寞在秋江上

かぜに
なぶらる
すがれた はちす
ゆうべの
しもに
のこるいろかも きえうせて
わびしげな あきのひ

 「乾荷葉」は連作で、他に3首ある。いずれも秋になってかつての風情を失ったハスをいたむもので、曲調ともにすぐれて高雅である。作者の劉秉忠は元初の人で、早く出家し僧となったが、元の世祖フビライに見出され、多くその身辺にあって諫言をしたと言われている。よほど尊敬された人のようで、没後も皇帝数代にわたって加増・加封を受けている。

«賞花時<引子>(秋水粼粼古岸蒼)

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