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2018年10月 8日 (月)

黒鳥の誘惑、三者三様+α

 白鳥の湖に、こんなおもしろいパドドゥがあるなんて知らなかった^^

 悪魔の娘オディールが、白鳥オデットに恋する王子ジークフリートを誘惑する場面。パドドゥはあまり好きじゃないのだけど―延々踊るばかりだから―これは合間合間に演技がはさまるので面白い。
 
 黒鳥は王子と踊りながらも、王子が熱を上げてくると不意に拒否したり、かと思うと大胆に王子に身を投げかけたりして、誘惑の限りを尽くす。これじゃ純情な王子、たまらないよな…

 

 これはニーナ・カプツォーワの黒鳥。かわいらしいカプツォーワには向かない役だと思ってたけど、どうして、大胆に誘惑しています。この人、ほんとに役者だな…
 小悪魔ふうなんだけど、しかしキャッキャした小悪魔じゃなく、冷静な小悪魔。可憐なんだけど、すごく悪い妖精。拒否のしかたがピシャッとしてる。白鳥の真似(だと思う)をして、床に伏せて翼を動かしつつ王子をじっと見るようすは、「ほら、あなたこれが好きなんでしょ?」という感じ、実に意地悪。しかも王子がたまらず駆け寄ると、すかさずサッと腕を突き出し「ダメよ!」と拒絶…そりゃ、王子も、わけがわからなくなって、ふらふらになるわ…

 で、王子が隅っこで苦悩したり懐疑したりしてるあいだ、父の悪魔―何だかお洒落なコーチみたい―のところに戻っては、こそこそ悪いアドヴァイスを受けているのがナイス。「パパ、あいつだいぶ参ってきたわ」「よし、じゃ次はもっと大胆にいってみろ」みたいな^^;

 なお、これはボリショイじゃなくタタール国立劇場?か何かでの演技、音楽家との共演を兼ねてる?みたいなので、音が素晴らしく綺麗。

 これはウリヤーナ・ロパートキナの黒鳥。いきなり踊りが絶え入るばかり美しいので、別に誘惑しなくても、王子が勝手にひとりで落ちるだろうから大丈夫と思わせます^^

 この黒鳥は、誘惑的というよりも、何だか王子に興味がないような黒鳥。二人で踊っていても何だか非協力的な感じで、王子が腰に手を回してきても「あら、いたの」みたいな様子で、拒否のしかたもあまり熱がなく、王子を眼中に置いてないみたい。そのくせ要所要所できちんと誘惑してきて、怖いくらい綺麗な黒鳥…
 ここでは悪魔パパも、歩きまわったり、黒鳥を王子から引き離してみたりと、なかなか動き回ります。王子を操るためだ、とする解説があったけれど、まあこのロパートキナの黒鳥に関しては、パパの助けはいらないでしょうな。

 定番中の定番、スヴェトラーナ・ザハロワの黒鳥。これは…綺麗です。

 うーん、悪くないけど、もっと演技がほしい、まあ好みの問題だけど。ただダンスするとか、オデットのようにそこはかとない悲哀とかほのかな愛情とかならいいのだろうけど、この場面みたいに表情と内心が矛盾するとか、笑中剣ありとか、腹黒い策略を楽しみつつ実行とか、そういう表現になるとちょっと食い足りない…

 ここでの悪魔パパは、どっかりと椅子に腰掛けたまま動きません。娘が王子を落とすのを確信している…というより、ザハロワの動きをお客さまに堪能していただくため、あえて後ろに控えているのでしょうね。
 最後のほうで、黒鳥が片足立ちしたままで王子と結んでいた手を互いにパッと離すところがあるのだけど、ここが変にもたついて、なかなか手がほどけなくて、やっとほどけた時は思わず客席から拍手が起こってました^^;

 で、上3者とは振り付けがだいぶ違うけど、マリアネラ・ニュネツの黒鳥も。

 ビックリするほどあざとい黒鳥。王子が、―当時、このペアはほんとにカップルだった由だけど―、情熱的に手を取ろうとするたびに、「あら、手が」みたいな調子で笑いながらヒョイと引っ込めてしまう。うろたえて傷つく王子の表情がラテン系でなかなかよい。この黒鳥は、拒否こそしないけど、存分に男をもてあそんで面白がるタイプです。
 もてあそばれる王子、可哀想に…と言いたいところだけど、この王子、顔つきが大柄で、表情が派手なので、悪いが見ていてとても愉快^^;

 パパ悪魔もここでは大活躍、娘に耳こすりをしたり、いかにも手で遠隔操作ぽい動きをしたり、舞台をのし歩いたり、王子から黒鳥を取り上げて踊ったり…途中、突然悪魔の手下ども(黒服で立ち尽くしている人たち)がザワザワと一斉に立ち上がり、舞台に詰め寄るようなシーンがあったので、何事かと思いましたが、どうやら窓の外で王子に呼びかけようとする白鳥オデットの妨害に入ったようです。

 ちなみに、このペアはコーダ(このシーンの一番最後)もとてもよいので、是非ご覧を。とことん男をじらし抜く、悪い黒鳥ですよ^^
 総じてここの『白鳥の湖』はお芝居っ気たっぷりのようですね…何だか全幕見たくなったな〜

  私はちょっとしたしぐさや表情から、えもいえぬ空想がいろいろと紡ぎだされてくるようなバレリーナが好み。「こんなことを企んでるな」「こんな気持ちをこめているな」などと揣摩憶測しながら見ているのが楽しい。それってバレエの楽しみ方?と言われるとどうもわからないけど^^

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