馬術観戦

2019年5月16日 (木)

ドレッサージュ決勝でジャンプ・オフ?

 FEIというところは、どうも素っ頓狂なアイデアを思いつく団体だと見える。

 ドレッサージュ競技でのトップ8に、それぞれの乗り馬を交換させて、それで決勝戦をやろうというもの。

 乗り馬の交換というのは、現在の大きな世界的大会ではどうか知らないが、ずっと以前にはショージャンプの競技では存在していた。ユーチューブの動画で、ニック・スケルトンがソウル五輪の覇者ピエール・デュランの乗り馬・ジャプルー号、―名代の癖馬で、映画にもなったそうな―に跨がり、そしてデュラン選手はまた別の選手の馬で、というふうに互いの馬を乗り換えて、競技を行うのを見たことがある。もっとも、正規の競技なのか、ショーみたいなものだったのかは、未確認だけど。それにしても、これほどのハイクラスのライダーであり馬であるのだから、決してジョークみたいな催しでなかったのは確かだろう。

 ところで、上のリオやソウルの金メダリストたちをもってしても、違う馬に乗ってのジャンプは大いに勝手が狂うのを私は見た。馬にしても、もちろんジャプルーをはじめ当時の世界的一流馬ぞろいなのだけど、それでもライダーが変わると飛越を拒否したり、障害を落としたりという場面が頻発していた。ジャンプとドレッサージュと、どちらのほうがライダーと馬とのコミュニケーションがむずかしいのか、あるいは複雑なのかはわからないけれど、乗り馬が変わるとライダーの勝手が狂うというのは同じことだろうと思う。

 ドレッサージュの馬は、基本的に商品である。だから、誰のものになっても同じ動きができるよう、たとえば脚で馬のこの部分を刺激すれば常歩を、別の部分を刺激すればキャンターをといったふうに、いわゆる一定の「扶助」に的確に反応するよう入念に調教されている由。だから、ライダーたちがその場で互いに乗馬を取り替えっこしても、何の不都合もないはず、と一応は思われる。が、馬も生き物なのだから、当然、いくらかの当惑は最初はあるだろうし、ライダーにしても勝手の違いを感じるに違いないのは上に述べたとおり。決勝では、そこにライダーの技量を見て、順序をつけようという狙いなのだろう。その狙い自体は悪くないし、むしろ面白いとさえ思うのだけど、さて、これが、実現可能かどうか。

 ガルやハンスピーター、またワースのような百戦錬磨のプロフェッショナル・ライダーなら、急に他人の馬に乗ることになっても、それほど戸惑わないと思う。競技経験はもとより、新しい馬に自らトレーニングをつけた経験が十分にあるだろうから、馬の急な変化への対処法をちゃんと心得ているだろう。問題は、資金の豊富さにまかせてメダリストの馬たちを買いあさり、それでもって五輪出場を狙うようなアマチュア・ライダーたちである。こんなライダーたちは、おそらく自分の乗り馬以外の馬には、ほとんど乗った経験がないだろうし、また、トレーナーによって徹底的に調教された馬にしか乗った経験がないだろう。だから、馬が突然予想外の動きをした時など、動揺して、すみやかに対処できないだろう。そのようなライダーの恐る恐るの騎乗と、ベテランの自信たっぷりの騎乗とに、素人でもハッキリわかる違いがあるのは、想像にかたくない。いや、ベテランが代わって乗った演技のほうが、もともとのライダーのより、はるかにめざましい場合だって大いに考えられる。その屈辱に、金持ちアマ・ライダーがはたして耐えられるものだろうか。しかし、FEIやドレッサージュ界の最大のお得意さまは、まさしくそのお金持ちライダー。

 であるからして、この、騎乗馬取替えっこプランは、あるがままに施行されればなかなかの見ものになると思うけど、五輪選抜のような競技会では絶対施行されないだろうし、施行されるとすれば、そのときの出場者をよくよく吟味して、どう転んでもドングリの背比べになるような場合にのみ、施行されることと思う。

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2019年4月 4日 (木)

長生きしたラバ&Rollkurについて

 なんと50歳以上を生きたラバ(馬とロバの雑種)。

 

 こんなに長生きすることもあるんですね、ラバって。ご冥福をお祈りします。

 で、同日にユーロドレッサージュの記事に「フランスが馬のアゴヒゲ・耳毛のカットを禁止」というのが出ていた。これは、通常馬の口付近や目の上、耳の中に生えている毛を、美観上の意識から、剃り落としたり刈りこんだりすることに罰則を設けるという法律?で、ドイツではすでに施行されているもの(アメリカじゃまだの由)。馬だってダテにそんなものを顔面に生やしているわけでなく、ヒゲでさわることで周辺のものを探っていることは容易に推測されるから、これはまあ当然の措置といっていいでしょう―というか、あれほど動物の愛護に熱心でありその生態にも詳しいヨーロッパの人々のなかに、綺麗に見えるからというだけで自分の乗る馬にヒゲ剃りを敢行する者(それも、一応ドレッサージュ・ライダー)がいるということが、驚きといえば驚きだけど・・・

 それより目を引いたのが、それに対するコメントのうちのひとつ。それは、「ヒゲ剃りもだけど、それ以上にRollkurを放置しておくのがずっと問題だ」というもの。このRollkurというのはHyperflexionともいって、馬の首を極端に弓なりに―馬の鼻先がその胸にふれるくらい―曲げさせること。風説では、オランダのA・グルンズヴェンが始めたとも言われている。

 このRollkurは、競馬では”ツル首”と呼ばれてるものに近いけれど、非常に勇ましく、闘志満々に見えて、見栄えとしては素晴らしいもの。が、10年前、競技前のウォーミングアップでP・キッテルがこのツル首でトレーニングしていたとき、乗り馬のスキャンディック号が口から血の気の失せた舌を垂らしていた動画がネットに投稿され、大いに拡散し、非常な物議を醸し、それ以来ドレッサージュ界ではことあるごとにこのRollkurがヤリ玉に挙げられるようになっている。

 私は馬の舌や呼吸器や血管に対する知識は全然ないから、こういう現象が容易に起こるものか、そしてそれを馬が苦痛に感じているのかはよくわからない、以前、日本の獣医師がこの動画―blue tonge horseで検索できる―を見て、ハミのきつさや舌の位置などいろいろな条件が複合して舌のチアノーゼに到ったのだろうと推測している記事を読んだことがあるけれど。いかにも、青褪めた舌というのは不健康に違いなく、そんなことに至らないのがいいには決まっているけれど、その原因がすべてRollkurにあるとか、Rollkurをすれば馬はみんなああなるとかの考えは、相当疑問だと思う。先に述べたように、ツル首は競走馬でもよく見られるが、その場合馬は騎手にその姿勢を強制されているわけではない―闘志が全面に出過ぎ、走る気になり過ぎているのを、騎手が抑えているから結果的にあんな格好になるので、騎手としてはむしろ御しにくくて困るのである。思うに、気合いが乗って逸り気になっている馬、エキサイトしている馬は、人に強いられなくても自らあのような、ツル首のポーズを取りがちなのだ。それが苦しげに見えるからといって、ほんとに馬が苦しんでいるかはわからないし、また、あのような一種見栄を張ったポーズは、多少の苦しさは忍んでも、興奮した動物は―人間も含め―堂々と―とりわけライヴァルや恋人の前では―取って見せるものでもある。ほんとに馬が苦痛で嫌悪感をおぼえているのなら、騎乗者に逆らって暴れたり、強引に首を伸ばしたりするでもあろう。Rollkurの姿勢をとらせることが馬への虐待だとか、そんなことをさせるライダーは残酷だとかは、一概には言えまい。Rollkurの姿勢うんぬんより、むしろライダーが馬のコンディションに配慮せず、しつこく、厳しく、漫然とそれを行うほうに問題があるように思う。いわば、Rollkurは体操の大技みたいなものであって、ここぞという時に発揮するべきものであり、それを成功させるためには日々の練習も必要だが、しかし練習で大技ばかりやってケガをしては何にもならない、―筋力、柔軟さ、スタミナなどを十分に養った上で、もっとも効果的にできるよう工夫するべきものではないか。

 Rollkurがヤリ玉に挙げられるもっぱらの理由は、実のところ、「誰でも見てわかるもの」だからだろう。ちょっと馬術をかじった人間なら、YouTubeの動画を漁って「このライダーはRollkurを使っている」と非難するのは容易である。馬が苦しんでいるとか、可哀そうとかは、見る人の主観であるから、どうにでもなる。―まさか馬にインタビューすることはできないし、といってそれを正確に知るため厩舎に就職するということもできまい。が、実際のところ、どれくらいの時間Rollkurを続ければ馬に負担になるのか、などの考察はほとんどされておらず、ただやみくもに非難されている、というのが実情のようだ。また、馬の鼻先がその胸からいくら離れているから「これはRollkurではない」とか、何か試技を審査するかのような態度で論じているものも見たことがあるけれど、馬の苦しさ(感じてるとすれば)の点から見れば、それほどわずかな姿勢の差が、どれほどの助けになるものか。程度の差こそあれ、依然として馬に苦痛を強いている、という点ではさして変わらないのではあるまいか。―まして、そのわずかな差で、「Rollkurをしないからこのライダーは偉い」とか「Rollkurをしているからこのライダーはダメだ」とか決めつけるというのは、片腹痛いような気がする。たとえRollkurを全然しなくても、ただのピアッフェやピルエットなどでも、多かれ少なかれ馬は苦痛や負担を、少なくとも煩わしさを、感じていることだろう。そういう場合のライダーの責任論は、どうすればよいのか。

 ほんとに馬を苦しませたくないと思うなら、すっかり馬術というものをなくすよりほかないと思う。結局、馬術というものは馬のためというより人間の楽しみのためなのだから。それでも馬術を続けたいのなら、馬を苦しめることは当然の前提として、できるだけそれを少なくすること、できるだけ人間の自分より馬のほうを優先すること、馬に関するあらゆる知識をできるだけ身につけるよう努めること、等を当の人間が肝に銘じておかなくてはなるまい。

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2019年3月23日 (土)

インドア・ブラバント、ガル&ヴォイスのキュア、音楽が?

 もうだいぶ日がたったけど、このあいだのガル&ヴォイスのキュアについて少し。というか、クリップマイホースで視聴した時、えっと思ったのが、途中でキュアの音楽が別曲とダブって聞こえたこと。それもかすかにとか、ほんの少しの時間とかではなく、もとのキュア曲がかき消されるくらいのヴォリュームで、相当長きにわたって。あれは何なんだろう、配信の際のミスだかエラーだかだろうか?日本の視聴だけ、ああなったのだろうか?
 と思ったら、FBのコメントで、同じことをオランダの人が言っていた・・・ということは、クリップの収録そのものがああなんだろう。とすると、ナマの会場でも、あの状態で流れたんだろうか?
 録画を見た限り、観客の表情には動揺の色は見えなかったようだけど、しかし思えば、100近いFBのコメントの中でも、それについて触れたのは一人しかいなかったのだ。ということは、キュアを視聴する人の大部分は、音楽にはほとんど無頓着ということになるのだろうか?カッコいい曲が台無しにされたということを、別に残念に思わないのだろうか・・・コメントのほとんどはガル&ヴォイスの演技を褒めそやしているのだけれど、あそこまでBGMが乱されると、ペアの演技そのものにもかかわってくると思うのに、それを非難した―ひょっとすると気づいた―人がいないというのは、まことに不思議に思われる。
 しかし、ガルのファンですらこうであると思うと、現今の一般的キュアが、BGMなぞなくてもいいくらい技術ずく、動きずくのものであるのも納得できる。キュアはダンスだとかしばしば動画などのキャッチコピーで言われているけれど、ドレッサージュの専門家の感想ならともかく、ふつうのシロウトにはあれがダンスだとはまったく思えない。時々BGMに同調して動いているらしい、くらいがせいぜいである。しかしそれも、キュアの音楽に対する審美性や同調性が最初から期待されていないのなら納得がいく。音楽とぜんぜん噛み合ってないダンスほど、見ていてイライラさせられるものはないが、なるほど、そもそもダンスじゃないとすれば、そのイライラさせられるキュアがガルのキュアより高く評価されるのに不思議はない。キュアはダンスとかいうのは、単に演技のうしろでやや大きい音楽が流れるというのを誤解もしくは曲解しての文句で、あえていえば客引きの謳い文句だろう。というのは、キュアで実際にやっていることは、グランプリを我流にアレンジしたくらいのもので、音楽が果たす役割は別に評価されもしないし、上に述べたように、そもそも関心さえほとんど持たれないのだから。―これがほんとのダンスなら、音楽はどうでもよいどころの騒ぎではない(さらに異様に思われるのは、キュアの採点に特にもうけられている”芸術点”というやつ。これが、ダンスでも何でもない演技に対し、ダンスを意識したガルの演技よりはるかにたくさんの点数を審査員からどっと与えられるのだ。どう見ても、審査員が特定のライダーを恣意的に勝たせるためにもうけられた便法だとしか思えない)。
 ガルのファンがそのキュアを褒めそやすのも、どうやら、それがダンスだからじゃなく、ガルだからということらしい。とすると、この点、デュジャルダンやワースの「ご贔屓」と同じのようである。うーん、私としては、少々興醒めな感じ・・・

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2019年3月15日 (金)

インドア・ブラバントCDI3

 今日は日本時間20:00から、オランダのインドア・ブラバントCDI3(GP)があります。ドタキャンさえなければ筆頭にガル&ヴォイスが登場、れっきとした競技会にはガルはほとんど半年ぶり、ヴォイスに至っては1年ぶり、いや、お久しぶり。―実は、昨日すでにCDIWがあったんだけど、スタートリストがホームに全然アップされなかったので、おやおやと思ってる間に済んでしまった。まあ、ガルが出てないから積極的に見る気もなかったのだけど…なお、ハンスピーター&ドリームボーイは5位、これがワールドカップ・デビューになるシルホート&エクスプレッションは14位、後者はカクカクした動きが私はタイプじゃないが、もっとデキるはずのコンビだと思うので、何かミスがあったんだろうな。ミスといえば、ドイツじゃしょっちゅうワース組の次点になってるシュナイダー&サミーデイヴィスjrが9位、審査員連のフェイヴァレットのスウェーデンのキッテル組が8位。うーん、誰の目にも明らかなミスがあったのだろうか?まあ、1〜4位をドイツとデンマークが占めたから、これは今の既定路線なのだけど。

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2019年3月 9日 (土)

わき目もふらず

 昔、あるプロゴルファーが、ここぞという一打を放とうとした瞬間、轟音を立てて汽車がゴルフ場のすぐ脇を驀進していった―が、冷静を保ってその一打を見事にキメた、後になって記者がゴルファーに「よくあの轟音が邪魔になりませんでしたね」と感心すると、ゴルファーはキョトンとして「え、汽車通ったっけ?」と問い返したという。

 この馬は、まさにそんな馬。

 

 イギリスでドレッサージュのライト・ツアーの試技を行っている最中に、付近のクロスカントリー・コースから放馬した馬が駆け込んできたのだけど、試技中の馬がびくともせずに最後までやり遂げた、という動画。

 このとてつもなく集中した馬は、ライダーによると、ふだんはとてもホットな牝馬なので、逃走してきた馬がアリーナに乱入してきた時は心中どうなることかと観念の眼をふさいだらしいが、動画を見る限り、どうやら他の馬の存在に気づきさえしてないらしい。ずっと耳を前に傾けて、ひたすら自分の演技に夢中になっているもよう( ちなみに、放馬はペアの演技終了後、無事に確保されたとか)。

 コメントに、ひとつ間違えるときわめて危険な状況だったのだから、審判は試技を中止させるべきだった、という意見があるけれど、それはそうだが、肝心の馬が脇目もふらずに演技している以上、そのまま続けさせておいたのは正解だったかとも思われる。途中で止めさせていたら、集中の途切れた馬がそこで突然他馬の存在に気づいて、かえって暴れだしたかもしれない。

 それにしても、ペアが無事でほんとうによかったし、馬も人間並みに「集中のあまり周りのものが見えなくなる」時があるのだなと納得…

(追記:今、動画を見直したら、スタート時点から放馬うろちょろしてる…この状況で試技をスタートさせたのは、たしかに疑問だ。ちょっと関係者の判断が甘かったんじゃ?あるいは、ひょっとして、こんなことはよくあることで、珍しくもないからとか?)

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2019年3月 5日 (火)

思い違い

 今まで、トーティラス号の共同オーナーであるポール・ショッケモールと、アン・C・リンゼンホフとを夫婦関係―籍はどうであれ―だとばかり思っていたけれど、そうではないらしい。
 つい先日、コスモ号で有名なローゼンバーガー(←表記適当)家で非常な大火災が発生し、数頭の馬が犠牲となり人も負傷し、厩舎はじめ練習場などが焼け落ちてたいへんな被害を出したのだが、リンゼンホフ家が(近所のようだ)自家の建物や設備の一部を当座の落ち着き先としてローゼン一家に提供した、という記事を見たのが始まり。
 リンゼンホフって、たしかショッケモールの後妻じゃなかったっけ、と思って検索してみると、さにあらず、彼女はクラウス・ラスという人物と15年前だかに結婚していた。もっとも、マティアス・ラスは彼女の生みの子ではなく、ラス氏の連れ子。
 あちらでは結婚してもラストネームが変わらなかったり、入籍しなかったり、そもそも「結婚」じゃなくパートナーシップだったりするから、姓だけじゃとても婚姻(に類する)関係を察せられない…とはいえ、ショッケモールと彼女との関係が婚姻に等しい関係だと思い込んでいたのは、ずっと以前、何かにそう書かれていたのをそのまま信じていたのだろうな。とすると、まんざらそういう関係でもないわけでもないのかも。別に不倫とかではなく、彼女がラス氏とすでに別れているのなら、ない話でもなかろう。…調べればわかるかもだけど、面倒くさくてやる気が出ない。
 なおこのリンゼンホフ女史、えらい毛並みの持ち主で、父がオリンピック・メダリスト、本人もオリンピック・メダリスト(ドレッサージュ)、親譲りのスタッド(厩舎&トレーニングセンター)を所有し、ユニセフ傘下に財団など設立している。ユニセフに寄付するかと思えば、ドイツの政党にもどっさり寄付するなど、なかなかのやり手、どこかの組織の長になったり、何かの賞を授与されたり、そちらの方面にも相当に顔を利かせている模様。
 ちなみに、ショッケモールももとオリンピアン(こちらはショージャンプ)。こちらは実業家として辣腕をふるっており、運送会社を設立したり、マーケティング会社を立ち上げたり、ホース・ブリーダー&ディーラー以外にも手広くやっている(その途中で脱税で捕まったり、トレーニングセールでの馬への小細工?で咎められたりもしているけれど)。
 こんなに彼らの素性をほじくるというのも、つまり馬術界、少なくとも欧州の馬術界は、このような階級のひとびとが支配力を振るっている世界であると思うから。実力よりもファミリーの社会的・政治的・経済的影響力が試技の採点に反映され、馬への騎乗を職業としていない良家の子女らが、職業人に調教させた高価な良馬に乗ってオリンピックを目指す世界。…ショージャンプの世界も同じようなものかもしれないけど、こちらは命がけの世界だから、まだしもプロが幅を利かせていると思う。私はほとんど試技そのものを見ず、ネットで記事しか読まない、それも適当な流し読みしかしない人間だけど、それでも5,6年のうちにショージャンプの有名ライダーの名前は、だいたい聞き覚えがあるくらいまでになった。それにひきかえドレッサージュ・ライダーときたら、今だに全然聞き覚えのない人名がぽろぽろ出てくる。ユーロドレッサージュなど見ていると特にその感が強い。―”○○氏の馬××号が死亡!”などと時に記事になるけれど、人馬ともに「それ誰?」となる場合が非常に多い。―要するに、ドレッサージュには、コンスタントに表舞台に出て来るプロのライダーというものがジャンプに比べると非常に限られていて、それ以外の隙間を、いい馬が手に入った時とかオリンピックの選抜があるとかいう時だけにどっと出場してくるハイアマチュアのようなライダーが、相当な数、埋めているからだろう。
 ドレッサージュというものがそういうものであるのなら、別にそれはそれで一向構わないが、そんなんで取った金メダルなぞ何の価値があるのかと思う。FEIがドレッサージュ会場に足を運ぶ客の数や中継を見る視聴者の数が減ったことに危機感を持ったりするのも、片腹痛い。たとえて言ってみれば、こうしたドレッサージュはバレエやヴァイオリンの若手コンクールみたいなもので、出場者や関係者にとっては重要でもあれば力の入るものでもあろうけれど、一般のバレエ・ファンやクラシック・ファンにとっては大して興味あるものではない。ファンがほんとにチケットを予約して足を運ぶのは、ボリショイ・バレエ団とかウィーン・フィルハーモニーとか完成されたプロの公演であって、自分にとって大いなる楽しみとエキサイトが確実に約束されていると思うものしか、ファンは絶対に選ばない。―「うちの子が最高得点でコンクール1位になった!」なんて、そこの家族と先生以外、どうでもよいことだもの。

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2019年2月21日 (木)

3月のインドア・ブラバント、ガルはヴォイスと

 引退したような、してないような感じだった、ガルの長らくのセカンドホース、縁の下の力持ち的存在のヴォイス号が、来月のインドア・ブラバント(スヘルトーヘンボス)のCDI3戦に出場するそうです(今年はガルのワールドカップへの出場はなさそうですな)。

 それにつけても不審なのは、昨年末からガルの主戦・ゾニック号の姿が見えないこと。昨年12月のロンドン・オリンピアを体調不良でキャンセルしてから、1月の地元オランダはアムステルダムも欠場。このときFBで、ゾニックを検査にかけて、結果が分かり次第発表する、との記事が出たのだけど、それ以来何の音沙汰もない―申しわけ程度に写真が1回かそこら出たっきり。写真を載せるくらいだからそれほど具合が悪いことはなさそうだけど、あるいはメンタル面の問題なのかもしれないな…検査して身体的に何の異常もなかったから、発表することも特になかったかのかもしれない。
 そういえば、去年の10月にデンマークで”世界のトップ10ライダー”みたいな催しがあり、ガルはゾニックとのペアで出場―8月の世界選手権以来―したのだけれど、たしか最下位ではなかったかと思う。当時は、どうでもいいショーみたいなものだから、ガルが手を抜いたんだろうくらいに思っていたけれど、あるいはその時に、ゾニックが何かメンタリティーに問題をきたしていることがわかったのか、あるいは直接メンタル的にショックを受けるような事態があったのか…うーん、わからない。
 もしメンタル的問題なら、ガルにはアンダーカヴァー号での苦い経験があるから、小さなことでもごく慎重に対応していくことは十分考えられる。上の記事のコメントを流し読みした感じ、ゾニックの身の上を案じるようなものは今のところないみたいだから、現地においてもゾニックの身にゆゆしい大事が持ち上がっているような兆しは見受けられないのだろう。”休養”くらいにとらえられているのかな…そして、意外にヴォイスの復帰が喜ばれていたりする^^;
 ゾニックは、マネージャーのニコール・ワーナーによれば、アウトドア・シーズンでの復帰を(今のところは)目指しているもよう。とすると、5月あたりかな?

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2019年2月20日 (水)

日本人選手&きれいな馬、世界選手権へ

 ワールドカップ&オリンピックの障害馬術に、日本人選手がこんなきれいな馬で登場?

 記事によると、この馬(名前はLife is beautiful、いい名前だ)はもとスウェーデンのハーネスホース。ハーネスホースというのは、一人乗りの馬車を引く競技用の馬、もしくは競走用の馬のこと。オランダなんかでは前者の競技もなかなか盛んで、見事に前脚を高々と掲げて闊歩する馬&馬車の写真がしばしば見られるけれど、どうやらここでは、後者の競走馬のよう。
 日本じゃ競馬といえば、人が馬にまたがって走るものだけだけど(北海道のばんえい競走を除けば。これは重種の馬がソリを引くもの)、欧米では一人乗り・一頭立ての馬車競走もたいへん盛ん。この競走に出走する馬は、全力走のギャロップじゃなく、規則正しい速歩(トロット。とはいえ、すごく速い)で走るので、一般にトロッターと呼ばれている。トロッターというとフランス産のフレンチ・トロッターという馬種が有名だけど、このフレンチ・トロッターはショー・ジャンプ(障害競走)にも秀でていて、現在の馬術競技用の馬、いわゆる温血種には、その祖先として、多くのフレンチ・トロッターの血が流れている。
 で、このライフ・イズ・ビューティフル号は、スウェーデンでレース生活を送ったあと、日本へ売却され(きれいな毛色が注目されて乗馬にでもなる予定だったのかな。なお彼は去勢馬)、そこでニュージーランド人のライダーに見出され、そのビジネスパートナーだった日本人障害馬術ライダー・ヒロタ氏の、やはりライダーである奥さんの乗り馬になったというわけ。
 このペアはワールドカップ出場への日本予選を見事突破して、4月3日から開催されるワールドカップ・ファイナルに出場するのだけど、今年の開催地が、奇しくもライフ号の故郷のスウェーデンのイェーテボリ。それで、ちょっとした話題を欧州でも提供しているのですね。
 にしても、ライフ号、きれいだな…馬術競技に出て来る温血種に、こんなブチ模様はまず見られないのだけれど、しかし温血種的にはブチ模様が出ないわけではないみたいだし、ちょっと血統のどこかに別種馬が入れば、容易にこんな毛色が出るだろうとも思われる(ユーチューブとかで見たことあるし)。こんな華やかな毛色の競技馬が、もっと他にも出てきたらいいのにな〜

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2019年2月 3日 (日)

トーティラス再登場で感じたことまとめ

 トーティラス号が4年ぶりに姿を見せ、しかもそれが故郷オランダの、かつて自身出たことのある会場のショーに、エドワード・ガルと顔を合わせて、というので、なかなか感情的になっているコメントがいろんなFBで見られますが、ここで私の感想をまとめておくと、

1.ガルはトーティラスと再会して胸中いかばかりか…と涙ぐむようなコメントもあるけれど、それはガルも涙ぐむほど懐かしかったろうし万感胸に迫るものもあったろうが、あのあとアンダーカヴァー号もいればヴォイス号もいて、それぞれ立派な成績を上げてきた。10年前に変わらぬ絆、とかいうのは、ちょっとアンダーカヴァーたちがかわいそう。

2.そういえば、マティアス・ラスもかわいそう。ほぼオリンピック出場だけが目的(金を払ったショッケモールとしてはブリード需要も見込んでたろうが)でトーティラスを手に入れたのだろうけど、たぶんそういう坊っちゃん/嬢ちゃんライダーは他にもたくさんいる。オリンピック用にとプロの馬をハイアマチュアがごっそり大金で買い込むのは、欧州のみならず米でもアジア(日本含む)でもどこでもある現象(馬7人3と言われる競技で、それだけ「良馬さえいれば自分でもメダルが取れる」と意気込むハイアマチュアが多いのだろう)…そう言うと、嘆かわしいようにも感じられるけれど、実のところ、ドレッサージュ界は、それを地盤として成立しているようなところが大いにある。オリンピックを目指すお金持ちに、高値で購入されるということをゴールとして、ブリーダーは馬を生産し、ライダーは調教をつけ、またショーで高得点を得るべく励んでいる、極言すればそう言える面がたしかに存在する。そう考えれば、ガルが磨いたトーティラスという「商品」が、オリンピック目当ての「金持ち」のものになったというのは、まったくふつうの流れに過ぎないわけ。…ラスにかぎって「ガルよりずっと下手」「トーティラスをオランダに返せ」と非難され続けるイワレは元来ありようがないはずなのだ。

3.それもこれも、ガル&トーティラスが非常な人気者だったせいだが、ではそれはなぜかというと、「キュアがカッコよく、誰にでも楽しめた」ということに尽きる。私は門外漢だから何とも言えないが、たぶんあのキュアは、技術的にも高難度なのだろう。しかし、もしガルが、現在のワースやデュジャルダンのやっているような、やはり「高難度」のキュアを当時やっていたとしたら、トーティラスはここまで人の記憶に残る馬にはなっていまい。トーティラスのキュアはまだ無名のころ「サーカス」と嘲られたことがある由だが、ドレッサージュとサーカスとでは、どちらがよりメジャーで人気があるかは言うまでもない。…おかしいのは、ガルがトーティラスとコンビ解消後も、まったく同じ路線ですばらしいキュアをやり続けているのに、それがいっこうドレッサージュ界でふさわしい評価を受けず、その一方で、トーティラスばかりが神さまのように持ち上げられ続けていることだ。「サーカス」を小馬鹿にしながら「ドレッサージュをメジャーにしてくれたトーティラスが懐かしい」なんて、矛盾以外のなにものでもないのだけど、FEIとかはちゃんとそこをわかってるのかしらん…

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2019年2月 2日 (土)

意味不明のイエローカード

 とてもつまらないニュースだけど。

 18歳のライダーが競技後にFEIにイエローカードを切られた、というものだけれど、その理由が、英語がわからない日本人の私ならともかく、欧米人にすらよくわからない、というから恐れいったもの。

 ふつうイエローカードというものは、馬への虐待などに対して切られるべきものだが、どうやらこの場合は、ライダーが荷物をトレーラーに積み込もうとして、道路と歩道を隔てていたロープ?を切った、というだけのことらしい。もちろん、馬が道路で車なんかと接触しないよう、安全のために張られているものではあるが、競技が終わって、迎えのトレーラーが来ていて、もうすぐ馬も積み込むのだし(馬を積む時にはもちろんロープは切っていい)、まず大きな荷物を先に片付けようとして、何気なく切っただけのことだろう。不注意には違いないから(荷物より馬や人の安全を先んずるべきだから)、係員としては、荷物を入れるのを止めさせ、まず馬を先に車に入れさせて、それから安全を何と心得ておるかとその場でライダーにお灸をすえればよいだけのこと。さも鬼の首でもとったかのように、ここぞとイエローカードを切るなんて、どうかしてる…あるいは、注意した時に言い返されでもしたのかもしれないけど、それでも18歳の若者、―ほんの高校生程度だ―、に対してあまり大人げないという批判はまぬがれまい。ほぼ弱い者イジメと言ってよかろう。

 だいたいドレッサージュのイエローカードなんぞというものは、去年1年間でも3回しか切られておらず、しかも「馬への虐待」で切られたのはいちどだけ、あとの2回は「係員(FEIに属する)への不従順」の由。私も覚えているけれど、そのうちのいちどはオランダのウィッテ=ブリースに対するもの…ドイツはアーヘンの大会で、試技前に練習馬場でスタリオンのチャーマー号に騎乗中、すぐ近くで行われた表彰式の騒音におびえてチャーマーが発汗&暴れたのを、係員が「馬が異常だ」と騒ぎ立て、トレーナーらと口論になり、その結果「おまえが悪い」みたいに埒外のウィッテ=ブリースがイエローカードを切られたというもの。この申し立てをしたFEIの係員は、午前中チャーマーを曳き運動させていたトレーナー(ウィッテ=ブリースの夫)が鞭を持っているのを見て、虐待を見たかのように大騒ぎし、逆にトレーナーに笑われたというから、どうもそれを根に持っていたらしい。いや、まさか今回も同じ係員のシワザじゃあるまいな…

 ”上の好むところ、下これに習う”というけれど、お手盛りの採点をこととする審査員を養っていれば、ルールを勝手に拡大解釈して下々を圧迫する係員だって、FEIから出てきておかしくないわけだ。

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