訳詞・李煜詞

烏夜啼(相見歓)   

無言独上西楼
月如鈎
寂寞梧桐深院
鎖深秋

剪不断
理還乱
是離愁
別是一般滋味
在心頭

ただひとり たかどのに
みかづきと
さしむかい ものおもう
あきのよる

たちきりも
わりきりも
ようしない
おもかげに にたものの  
うずくあり


烏夜啼

昨夜風兼雨
簾幃颯颯秋声
燭残漏滴頻欹枕
起坐不能平

世事漫随流水
算来一夢浮生
酔郷路穏宜頻到
此外不堪行

ふくかぜと あめに
秋もよおせる ゆうべ
灯もつけず 気もそぞろ
とこをでて すわる

うたかたの うきよ
はかはきは ひとのよ
酔い酔いて 日くらすに
まさるみち なけん


浪淘沙

簾外雨潺潺
春意闌珊
羅衾不耐五更寒
夢裏不知身是客
一餉貪歓

独自莫凭闌
無限江山
別時容易見時難
流水落花春去也
天上人間

さんさんと あめのふる
おそはるの よあけ
あさびえの しみるしとねに
ふるえつも なおもまどろむ 
たびびとの あわれ

ただひとり みるなかれ
ふるさとの さんが
あうときも しらでわかるる
このはるよ ながれまかせの
おちばなと 我よ


浪淘沙

往時只堪哀
対景難排
秋風庭院蘚侵階
一任珠簾間不捲
終日誰来

金琑已沈埋
壮気蒿莱
晩涼天浄月華開
想得玉楼瑤殿影
空照秦淮

わすれにき かなしみを
またさそう あきのひ
やえむぐら うずむるやどに
たれこめて ひねもすおれば 
ひとかげも またなし 

しろがねも わかやぎも
ちりうせて ひさしく
ただしのぶ よぞらのかなた
てるつきに かがやきわたる
しらたまの 舞殿
 


虞美人

春花秋葉何時了
往時知多少
小楼昨夜又東風
故国不堪回首月明中

彫闌玉砌依然在
只是朱顔改
問君能有許多愁
恰似一江春水向東流

はるのはな あきのもみじは
めぐりやまねど
ひとやにも 東風ふきそめば
いとどしのばる あわれふるさと

たまの宮 あるじ欠くとも
かわらずありや
はきまほし うれいのかぎり
海原みたすと ながれにのせて


虞美人

風回小院庭蕪緑
柳眼春相続
凭闌半日独無言
依旧竹声新月似当年

笙歌未散尊前在
池面氷初解
燭明香暗画楼深
満鬢清霜残雪思難任

やなぎのまなこ そよかぜに
ほほえめる はるのその
ひとりながめて ひもすがら
葉末につきの ゆらぎさすまで

いけのこおりは とけそめて
さけの席 うたやまず
ともしびのまど おくふかく
しろきこうべに おもいつれづれ


子夜歌

人生愁恨何能免
銷魂独我情何限
故国夢重帰
覚来双涙垂

高楼誰与上
長記秋晴望
往時已成空
還如一夢中

ひとにしあれば かなしみを
しらぬものこそ なからんに
ふるさとを ゆめにみ
ひとりなく われあり

ただひとり ながめる
あきぞらは はてなく
まぼろしに まがえる
そのかみの おもいで


望江梅

間夢遠
南国正芳春
船上管弦江面緑
満城飛絮輥軽塵
忙殺看花人

みなぐにの
はるこそよけれ
やかた船には笛たいこ
落花のゆきをふみわけつ
ぞめいてまわる


望江梅

間夢遠
南国正清秋
千里江山寒色遠
路蘆花深処泊孤舟
笛在月明楼

みなぐにの
あきこそよけれ
千里はるかに山あおく
苫舟つなぐ芦原に
いずこの笛の音


菩薩蛮

花明月暗籠軽霧
今宵好向郎辺去
剗襪歩香階
手提金縷鞋

画堂南畔見
一向偎人顫
奴為出来難
教郎恣意憐

つきかげおぼろな春のよる
きみと会うにはこよいこそ
くつを手にさげ くつしたで
足すりわたる にわの石

お堂のみなみで待ちあわせ
からだふるわせすがりつき
めったにあえない仲だもの
こんやは好きになさってね