訳詞・温庭筠詞

更漏子 

相見稀
相憶久
眉浅澹烟如柳
垂翠幕
結同心
待郎燻繍衾

城上月
白如雪
蝉鬢美人愁絶
宮樹暗
鵲橋横
玉籤初報明

あわれねば
なおおもう
みどりにこむる まゆのいろ
とこをしき
よぎをのべ
宵待ち香を ひとりたく

つきしろは
かたぶきて
うなだれてつく ためいきに
あまのがわ
ほのしろく
またもせまれる あさぼらけ

 

更漏子

玉鑢香
紅蝋涙
偏照画堂秋思
眉翠薄
鬢雲残
夜長衾枕寒

梧桐樹
三更雨
不道離情正苦
一葉葉
一声声
空階滴到明

なみだつたわす
べにろうそくの
わびしくてらす ものおもい
えがかぬまゆの
みだれがみ
あきのよながの ひとり床

桐の葉にふる
よふけのあめよ
つらいこころも しらずとや
はらはらとまた
ほろほろと
ひとなきにわに はふりおつ


更漏子

柳糸長
春雨細
花外漏声迢遞
驚塞雁
起城烏
画屏金鷓鴣

香霧薄
透簾幕
惆悵謝家池閣
紅燭背
繍簾垂
夢長君不知

はるさめに
そぼぬれる
はなをおどかす 時太鼓
からすなき
はばたけど
まくらびょうぶは おともなし

そらだきの
あわき香の
とばりをもれる ねやのうち
灯をそむけ
たれこめて
ひねもすきみを ゆめに見ん

 

更漏子

星斗稀
鐘鼓歇
簾外暁鶯残月
蘭露重
柳風斜
満庭堆落花

虚閣上
倚欄望
還似去年惆悵
春欲暮
思無窮
旧歓如夢中

ほしあかり
うすれゆき
しらめるそらに とりのこえ
いとやなぎ
かぜにまい
にわをうずめる はなのゆき

ただひとり
たたずめば
こぞのうらみの またかえり
ゆくはるに
あきれはて
おもいではただ ゆめのごと


菩薩蛮

玉繊弾処真珠落
流多暗濕鉛華薄
春露浥朝華
秋波浸晩霞

風流心上物
本為風流出
看取薄情人
羅衣無此痕

ぬぐいもあえぬしら玉の
ここだ流れるかんばせは
あしたのつゆにうるおえる
いちにちばなにさもにたり

こころにあわれしらばこそ
ふとかきくれるときもあれ
こいするものをあわれまぬ
君がそでにはあともなし


夢江南

千万恨
恨極在天涯
山月不知心裏事
水風空落眼前花
揺曳碧雲斜

たまのおも
たちきれん このうらみ
のぼるつき すずしくも照り
まのあたり 花はちりゆき
ゆうぐもは たなびけり


夢江南

梳洗罷
独倚望江楼
過尽千帆皆不是
斜暉脈脈水悠悠
腸断白萍洲

いつしかと
こころまつ 船着き場
みむかえて またみおくりて 
今日もまた みずものはなの
めにしろく にじむまで 


南歌子

手裏金鸚鵡
胸前繍鳳皇
偸眼暗形相
不如従嫁与
作鴛鴦

手にとるは 黄金のおうむ
身につくは 鳳凰のきぬ 
よこ目にて さて見くらべて
おもうよう しょせんかなわず
鴛鴦夫婦に