歴代評・馮延己

馮延己

903960>字は正中、一名延嗣。延己と書く時も。広陵(今の江蘇省)の人。南唐の烈祖(李昇)・元宗(李璟、李煜の父)に仕えた。元宗の信 任厚く、宰相になった。詞集は『陽春集』。唐五代時代の典型ともいえる形・気風の詞を多く詠じている。作品には、北宋の欧陽脩はじめ他人のものとされるも のが多数混在している。

『古今詞話』清・沈雄

・柳塘詞話曰、陳世修云、馮公楽府思深語麗、韻逸調新、有雑入六一集中者。
(「柳塘詞話」(沈雄の撰)にいわく、陳世修(『陽春集』の撰者)は言った、馮公の詞は思い深く語は華麗、風韻すぐれ調子は新鮮である、六一集(宋の欧陽脩の撰)中に混入した作品もあると。)

『介存斎論詞雑著』 清・周済

・皋文(清の文人・張恵言)曰、延巳為人専蔽固嫉、而其言忠愛纏緜、此其君所以深信而不疑也。
(皋文(清の文人・張恵言)は言った、馮延己の人柄はもっぱら不正を行い強情であったが、ことばには忠実さや愛情深さがあふれている、これが主君の無二の信頼を得た理由だと。)

『詞概』 清・劉熙載

・温飛卿詞精妙絶人、然類不出乎綺怨。韋端己・馮正中諸家詞、留連光景、惆悵自憐、蓋亦易飄颺於風雨者。
(温庭筠の詞は精妙並ぶものがない。しかし、閨怨の類いばかりである。韋荘・馮延己らの詞は、過ぎ行く光景を惜しみ、自らを嘆いて悲しみ、けだしまた風雨に吹かれて飛びさ迷うようなふぜいである。)

『詞壇叢話』 清・陳廷焯

・後主小令、冠絶一時。韋端己亦不在其下。終五代之際、当以馮正中為巨擘。
(李後主の小詞は、一時に冠絶する。韋荘の詞も、おさおさそれに引けを取らない。それでも五代では、まさに馮延己をもって巨匠とするべきだ。)

『人間詞話』 王国維

・馮正中詞雖不失五代風格、而堂廡特大、開北宋一大風気。
(馮延己の詞は五代の風格を失わないが、器が格別に大きく、北宋詞の風を開く大きな役割を果たした。)