歴代評・韋荘

韋荘

836910>字は端己(たんき)。京兆(今の西安)の人。若くして両親を失い、貧しい中で刻苦し、詩名を知られるに到った。齢50を過ぎてよ うやく進士(官吏登用試験)に及第し、唐の滅亡後、蜀で国を開いた王建のもとで宰相に任ぜられた。晩唐・蜀の詩人としてつとに有名だが、その詞は温飛卿と 並び双璧をたたえられる。その詞風は温の華麗濃艶に対し、端麗瀟洒。なお、愛妾を王建に奪われたという伝説、その際に作った哀切な詞とそれに感じて自ら命 を断つに到った愛妾の悲恋の逸話がいくつかの詞話に語られている。詞集は『浣花集』。

『介存斎論詞雑著』 清・周済

・端己詞、清艶絶倫、初日芙蓉春月柳、使人想見風度。
(韋荘の詞は、清艶たぐいなく、初めて咲いた蓮の花や春の若い柳のようで、人にその風貌を想像させる。)
・詞有高下之別、有軽重之別、飛卿下語鎮紙、端己掲響入雲、可謂極両者之能事。
(詞には高下の別、軽重の別がある。温庭筠は語を下して紙を圧し、韋荘は響きを上げて雲に入らせた。2人ながら才能の極みと言うべきである。)
・毛嬙、西施、天下美婦人也。厳妝佳、淡妝亦佳、粗服乱頭、不掩国色。飛卿、厳妝也。端己、淡妝也。後主、則粗服乱頭矣。
(毛 嬙(春秋時代の美女)、西施(中国四大美女の一人)は、天下の美人である。着飾った姿も美しいし、あっさりした身仕舞いもまた美しく、粗末な服に乱れ髪を していても美貌が損なわれることはない。温庭筠の詞は着飾った姿である。韋荘の詞はあっさりした身仕舞いの姿である。李後主の詞は、粗末な服に乱れ髪の姿 である。)

『詞概』 清・劉熙載

・温飛卿詞精妙絶人、然類不出乎綺怨。韋端己・馮正中諸家詞、留連光景、惆悵自憐、蓋亦易飄颺於風雨者。
(温庭筠の詞は精妙並ぶものがない。しかし、閨怨の類いばかりである。韋荘・馮延己らの詞は、過ぎ行く光景を惜しみ、自らを嘆いて悲しみ、けだしまた風雨に吹かれて飛びさ迷うようなふぜいである。)

『詞壇叢話』 清・陳廷焯

・後主小令、冠絶一時。韋端己亦不在其下。終五代之際、当以馮正中為巨擘。
(李後主の小詞は、一時に冠絶する。韋荘の詞も、おさおさそれに引けを取らない。それでも五代では、まさに馮延己をもって巨匠とするべきだ。)

『人間詞話』 王国維

・温飛卿之詞、句秀也。韋端己之詞、骨秀也。李重光之詞、神秀也。
(温庭筠の詞は、語句がすぐれている。韋荘の詞は、気骨がすぐれている。李後主の詞は、精神がすぐれている。)