訳詩・漢詩

夜坐吟        李白

冬夜夜寒覚夜長
沈吟久坐坐北堂
氷合井泉月入閨
金缸青凝照悲啼
金缸滅
啼転多
掩妾涙
聴君歌
歌有声
妾有情
情声合
両無違
一語不入意
従君万曲梁塵飛

ふゆのよの ひえわたるよる
ことばなく ながきよをおる
うすごおり いどにはりそめ
ともしびに なみだはひかる
ひはきえて
いや泣けて
ききすます
きみがうた
きみがこえ
わがおもい
かさなりて
たがわざれ
まごころに ひびかねば 
みみあまき こえもなにそも 


烏夜啼        李白

黄雲城辺烏欲棲
帰飛啞啞枝上啼
機中織錦秦川女
碧紗如煙隔窓語
停梭悵然憶遠人
独宿孤房涙如雨

ねぐらにいそぐ たそがれの
からすのもらす ああ、ああと
はたをおる手を ふとやすめ
まどべにあゆみ ひとりごつ
とばりしずかな へやのうち
あめとなみだは はふりおつ 


遺懐       杜牧

落魄江湖載酒行
楚腰繊細掌中軽
十年一覚揚州夢
贏得青楼薄倖名

くるわのさけにみをしずめ
やなぎのこしとたわむれし
ととしのゆめを見果てれば
ただ性悪の名のみなり


金縷衣       杜秋娘

勧君莫惜金縷衣
勧君須惜少年時
花開堪折直須折
莫待無花空折枝

こがねにしきはまたあらめ
にはちのころはにどとなし 
はなはひらけばすぐたおれ
ちりて落つのはときのまぞ


無題       李商隠

八歳偸照鏡
長眉已能畫
十歳去踏靑
芙蓉作裙衩
十二学弾箏
銀甲不曾卸
十四藏六親
懸知猶未嫁
十五泣春風
背面鞦韆下

ちちははの めをぬすみ
化粧せし 八つのとし
花もようの すそたくし
野をかけし 十のとし
琴づめに ゆびかざり
いとまなぶ 十二とし
えんづかぬ 身をはじて
ひと避けし 十四とし
はるかぜの ぶらんこに
かくれ泣く 十五とし


菊枕       陸游

采得黄花作枕嚢
曲屏深幌鎖幽香
喚回四十三年夢
燈暗無人説断腸

まくらにこめし きくのはな
ほのかにかおる ねやのうち
いちどにめぐる よそとせの
ゆめはあれども きみはなし


少日曾題菊枕詩
轟編残稿鎖蛛糸
人間万事消磨尽
只有清香似旧時

かつてよみにし きくのうた
いまはとざせり くものいと
いきくたびれし 老いの身に
むかしの香のみ すがすがし