WFFS関連

2019年4月13日 (土)

Bay Ronald号について

 先日、WFFS遺伝子のオリジンと特定されたサラブレッドのベイロナルド号Bay Ronaldについて、ネットでちょっぴり調べてみました。

 ベイロナルド号は、そもそもネット検索でスラッと出てくるくらいだから、サラブレッド―競走馬―の世界ではなかなか有名な存在。ただし、スポーツ方面でなく、繁殖の方面で。産駒も同様に、スタリオンとして素晴らしい結果を出しているもの多数で、中には同時に競走馬としても見事な成績を収めているものもある。だから、ベイロナルドの系統は、英・欧の競馬界で一時期は相当な繁栄を誇ったのだけれど、ひとつには世界大戦の勃発で、またひとつにはレース距離の短縮化で(この系統には長距離を得意とするものが多かった)現在はひどく衰退している由。なお、この系統のもっとも著名な代表馬は、ベイロナルドの曾孫に当たる、歴史的種牡馬といわれるハイペリオンHyperion号。

・ベイロナルド 英国産 1893~1907 1899~英で種牡馬入り 1905~フランスで種牡馬入り

 ベイロナルド自身はドイツには渡らなかったけれど、産駒のダークロナルド号Dark Ronaldが引退後ドイツに購入されて、種牡馬として大成功。

・ダークロナルド 愛国産 1905~1928  1910~英で種牡馬入り 1913~独で種牡馬入り

 ドイツのハノーヴァー種、オルデンブルグ種、そしてホルスタイン種の血統にサラブレッドのダークロナルドの血が入ることになったのは、これがきっかけだったわけ。ダークロナルドのみならず、そのドイツ生まれの産駒(サラブレッド)たち、たとえば、Herold,Prunus,そしてそのまた産駒であるAlchimist, Oleanderなども、―彼らは独ダービーやバーデン大賞などを勝ったドイツきっての名馬らだけど―、ハノーヴァーの血統表にその名が散見される。
 ホルスタインの血統表、―わけてもCor de la Bryere系に見られるのは同じダークロナルド産駒でもSon-in-Lawだけど、このサンインローはずっと英国で供用(1916~)されていて、ドイツにやってきたことはないはず。たぶん、ダークロナルド産駒の成功ぶりに目を見張ったドイツの生産者が、それならサンインローもと、その産駒を導入したのでは(サンインローはかくべつスタミナに優れた馬だった由で、その血統がジャンプ界で大成功したのは決して偶然じゃなかろう。なお、コルドラブレヤは曽祖父フリオーソもダークロナルド系だけど、父もバリバリのダークロナルド系。二重にその血をひいてるわけ)。

 そうそう、実は、トラケナー種にもこのダークロナルドの血が入っているものが見られる。トラケナー種は、原則トラケナー同士との交配だけなのだけれど、その改良にサラブレッドが用いられた歴史がある由で、そうなると、地元ドイツの最優秀なサラブレッドが使用されたのは当然。

 というか、ハノーヴァーやトラケナーのみならず、あらゆるドイツの中間種の改良において、もしサラブレッドの血の導入が必要とされれば、まず地元の最優秀なサラブレッドが使われるのは当たり前すぎる話というもので、そのサラブレッドの血統が、ドイツでもっとも成功しているダークロナルド系であるというのもまったく当然のことだろう。そのダークロナルドが、そもそものWFFS遺伝子の持ち主だったというのはいかにも不運なことだったろうけど、現在のハノーヴァーやオルデンブルグやホルスタインにおけるWFFSの蔓延ぶりは、ダークロナルドの責任というより、その血統を繰り返し繰り返し、重ね重ね、ゲップが出るほど使いまわしてきた生産者の配合方針によるんじゃないかな・・・

 なお、ハノーヴァーの血統表で見られるダークロナルド系のサイヤーには他に、

・World Cup 1
・Blacksky(サラブレッド)
・Cottage Son(サラブレッド)

などがある。トラケナーでは、

・Doruto(母父サラブレッド←ダークロナルド系)・・・オランダ温血種・ヘルデルラント種におけるWFFSのオリジン臭いEl Corona号の母父。エルコロナは、父のAmorが怪しいとばかり思っていたが、どうもこっちか?
・Consul(父サラブレッド←ダークロナルド系)・・・WFFSキャリア2頭の母父(Don Vino号)
・Caprimond(祖父母サラブレッド←ダークロナルド系)・・・WFFSキャリア1頭の母父(Botticelli号)

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2019年3月28日 (木)

WFFSの起源馬発見

 WFFSの遺伝子をウォームブラッドの血脈にもたらした馬が特定されました。

 

 それはサラブレッドのBay Ronald号。彼の産駒のDark Ronald,Son in Lawなどを通じて、ハノーヴァー種やオルデンブルグ種のなかにWFFS遺伝子が拡散されたとある。

 これにより、以前から怪しいとされてきたいくつかの血統が、しかるべき裏付けを得た。

・Furioso・・・遠祖にBay Ronald

・Cor de la Bryere・・・Furiosoの曾孫、また父系もBay Ronald⇒Cor de la Bryereは直子Calypsoとともに、現ショージャンパーの血統の中心・根幹をなしている

・Ladykiller・・・父系・母系にBay Ronald⇒直子Landgraf,孫Lancerは、やはり現ショージャンパーの一大有力血統

・Lauries Crusador・・・遠祖Tudor Melodyは父系・母系ともにBay Ronald。Tudor Melodyの子孫の温血種にやはりWFFSのキャリアが出ているから、Tudor Melody自身もおそらくキャリア。

・Pik As・・・父系にBay Ronald。曾孫Pik Bubeの娘は大種牡馬Don Schufro(すでに引退しているが、先日キャリア判明)を産んでいる

 上記の血統は、お互いに交配されている場合も非常に多く、また同一血統内で近親交配されている例も少なからずある。なお、これらはハノーヴァーやオルデンブルグに抜きん出て多く配合されている血統で、オランダ温血種ではさほどではない(オランダ温血種のWFFSは、ホルスタイン種のEl Corona由来のものが多い。El Coronaの遺伝子は直子のKoss(キャリア)を通じてヘルデルラント種に広がっているが、ヘルデルラントのスタリオンにはオランダ温血種のライセンスを持っているものも多いのだ)。

 FBのコメントに「サラブレッドの交配をずっとやってきたけど、WFFSの罹患出生なんて見たことがない」とサラブレッド起源説を疑う人がいたけれど、思うに、問題は上にも述べたように、ハノーヴァーやオルデンブルグの配合の極端さにあると思う。優秀なスタリオンが出ると、たとえばFrioso1,Frioso2などのように全兄弟が何頭も生産されて交配に用いられたり、馬Aの娘が同じAの孫と交配させられたり、5世代の間に同じスタリオンの名前が3回も見えたり、これらの血統はひどく煮詰まっている。これでは病因となる遺伝子は、遅かれ早かれ発現せざるを得まい(WFFSはキャリア同士の交配で25%の確率で発症、流産・死産を招く)。キャリア同士がぶつかりやすい環境になっているのが、サラブレッドとは違う点で(サラブレッドも、Bay Ronald当時―1900年前後―は似たような事情だったかもしれないが、その頃はWFFSの概念そのものがなかったろうから偶然の病で片付けられたろう)、事実、同じ温血種のオランダ温血種などと比べても、ハノーヴァーのWFFSのキャリアのパーセンテージはずっと高くなっているのである(2018.春の資料によれば、オランダ温血種の7%に対しハノーヴァーは実にほぼ3倍の20%!それぞれ104頭、76頭を対象として。なおサラブレッドは95頭中4%)。しかも、たまたまなのかあるいはれっきとした生物学的根拠があるものか、遺伝力が強烈な、きわめて優秀なスタリオンにかぎってキャリアだったのだから、これは嫌でも拡散されずにはいない。拡散⇒近親で配合⇒優秀なスタリオン(キャリア)⇒拡散の繰り返しで、特に上にも出したCalypuso系などはえらいことになっている。

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2019年1月31日 (木)

ボッティチェリ号、去勢される

 去年、デンマークのヘルグストランドのスタリオン・ステーションでのWFFS検査で、キャリア判明していたボッティチェリ号が、去勢されて渡米したと報じられました。

 

 渡米自体は、購買主がアメリカ在だからすでに決まっていた―購買されたのはhorsesnlによると去年10月の由、すでにキャリア判明済みのころ―そうだけど、去勢は初耳。まだ7歳の若さで、コンテストにも入賞歴があり、キャリア判明するまではヘルグストランドのステーションでも大いにPRしていたほどの馬ですが、やはりWFFSではブリーディングには限界があると判断したのでしょう。その点、欧州と米国とでは考え方に差がある(欧州ではキャリア同士でなければブリーディングに差し支えないというのが今のところ主流)のかも。
 また、どうも欧州の生産者は、優れたスタリオンは欧州の外に出したがらないみたいだから(たとえばトーティラス産駒のスタリオンは、北米にはほとんどいないそうな。生産界には独占禁止法みたいなのはないのか)、渡米前提の購買がきまった段階で、去勢も条件になったのかも…そもそもWFFSキャリアでなければ、渡米を許可することもなかったのかもしれない(購買主のシャーロット・ジョースト(55)、―デンマーク生まれのアメリカ人グランプリ・ライダー、―は、ボッティチェリ以外にやはりヘルグストランドからグランドギャラクシーウィン号という非常に人気のあるスタリオンを買っているけど、こちらはいったん渡米はしてもシーズンには欧州に戻る予定の由。)

(このジョースト、上記の2頭のほかにもデンマーク種の若馬チャンピオンをとったチャップリン号(父ゾニック)も購買してて、どんだけ金持ちなのか―特にグランドギャラクシーウィンはとびきり高額だったはず―と思ったけど、ちょっと調べたところ、やっぱり企業経営者(馬術関連のグッズ)だった。馬術をはじめたのが35歳で、オリンピックに出るのが夢って、―悪いとは言わないけれども、―うーん、―正直あまりガルやハンスピーターのようなプロ・ライダーの邪魔はしてほしくないな…)

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2019年1月17日 (木)

ショッケモール、WFFSによる死産に保証金?

 この記事によると、つい先日11日、ようやく重い腰を上げて所有スタリオンのWFFS検査結果を公表したポール・ショッケモールが、妙な提案を発表しました。「自分のステーションで供用したスタリオンからWFFSで死亡した仔馬が産まれた場合、1万ユーロ(約120万円)を支払う」というもの。しかもこれは「弁償」ではなく、いわばCMのようなもので、”メディアによって誇張され報道されているWFFSが、実際はきわめてリスクの低い症例であることをアピールするため”であるらしい。

 ショッケモールのこの説は、いわゆるツッコミどころ満載というもの。

1.ショッケモールのスタッドは、WFFSが問題化した去年春から今までずっと、自馬の検査結果を伏せていた。今年1月やっと公表したのは、ドイツの法律が変わったから伏せておけなくなり、やむなくのこと。

2.即時強制検査に踏み切った国(オランダ)のスタッドはもちろん、日和見・無視の国(デンマーク、ドイツ)でも、自主検査/公表を行ったスタッドはあった(大所ではデンマークのブルーホース、個人経営とかではもっとあったはず)のに、ショッケモール(ドイツ有数の大所!)は徹底無視。

3・自分とこの検査結果自体はずっと把握していたはずなのに「配合する牝馬さえノンキャリアなら大丈夫」と言い放ち、牝馬のオーナーに自主検査を押し付ける一方で、キャリアとわかってた自家のスタリオンをそのまま供用し続けた。

4.WFFSで死亡したと確認できたら1万ユーロ支払うと言っているけれど、WFFS(キャリア同士の配合で25%の確率で発症)を発症した胎児はほとんど流産し、生きて産まれてくる場合は非常にまれ。

5.WFFSで死亡した仔馬がほんとに出ても、「たしかにWFFSである」と誰に保証してもらうのか、そしてその費用は?

 WFFSが注意深く対処さえすれば脅威でない症例であるのはたしかであれ、一番問題なのは、ショッケモールが今までとってきた対応の腹黒さ。しかも頑固で、あくまで「おれは悪くない」というスタンスで、メディアが事実をねじ曲げている(それなら去年中にさっさと検査結果という事実を公表すればよかったじゃないか)と責任転嫁。まるでアメリカの大統領みたいだ…
 なお、ショッケモールにとっては、1万ユーロなんぞハシタ金であるのは言うまでもありません。トーティラスをたった4回供用すれば、もう元が取れる金額ナリ。

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ブルーホース・ドン・シュフロ号、WFFSキャリア判明

 デンマークのブルーホース・スタッドが、衝撃の発表を行いました―著名スタリオンのブルーホース・ドン・シュフロ号が、WFFSのキャリアであると発表されたのです。

 ブルーホースは昨年の5月、WFFSが問題になった時、いち早く自主的に所有スタリオンの検査を行い(同じデンマークのヘルグストランドは当時、座視)3頭のキャリアを発表していました。そのときドン・シュフロの名前がなかったので、彼はノンキャリアだと思っていたのですが、あにはからんや、当時の検査は”available stallions”に対してのみ行われたもの―つまり、当時実際に精液を採取できる種牡馬に対してのみだったので、すでに25歳と老境のドン・シュフロには検査が行われていなかったのですね。それにしても、冷凍精液の販売は依然として行っていたのだから、未検査だったというのはどうかと思うけれど…

 もっとも、ドン・シュフロがあやしいということはすでに噂になっていたようで(たしかに怪しかった)、今回の検査は「発見」というより「裏付け」のようなものにも見えます。たしかに、ドン・シュフロがキャリアだとわかれば、今まで由来がわからなかったキャリアらの由来が一気に片付く。…それと、今まで「○○スタッドは全頭検査済み」とかで安心していたけれど、こういうことがあったからには、「○○号」と検査された馬名まで確認しないと、ノンキャリアだとは断言できませんね。

 なお、当のドン・シュフロ号のWFFS遺伝子の由来ですが、私は今のところ母父のPik Bube1号からじゃないかと思っています。

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2019年1月15日 (火)

Gestut SpreheでWFFSキャリア4頭

 ドイツのGestut Sprehe―名前でわかる通り、デスペラドス号とのコンビで名高かったKristina Bröring-Spreheの一族が経営するスタリオン・センター。なお、彼女の父親は、同時に冷凍食品メーカーの経営責任者でもある。手広くやってるな―で、新たに4頭のWFFSキャリアが発見されました。

 この4頭は、

Amazon号…父A la Carte号がキャリア

Chico's Boy号…祖母父Cor de la Bryere号が疑い濃厚キャリア。父Carpaccio号もCor de la Bryereの血統だからあやしい

Dicapo号…父方はセルフランセ種だからよくわからないけど、母馬はCor de la Bryere号、Amor号と疑わしい血統を引いている。

 ついでに、最近Ladykiller号の血族―Landgraf1, Lordなども疑わしく思われるようになってきた(上記のDicapoの母馬にもその血が入っている)。レディキラー号はサラブレッド。キャリアLondonderry号の父Lorlie's Crusador号もサラブレッドだったし、結構サラブレッドにもWFFSは多いんじゃないか…?

 上記の3頭はジャンパー。あと1頭はドレッサージュ馬で、

Santo Domingo号…母父が、先日キャリアかもと発覚したFuerst Heinrich号

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2019年1月12日 (土)

WFFSキャリア、さらに2頭

 ユーロドレッサージュにはまだだけど、オランダのオンライン馬術誌Horsesnlを見て、さらに2頭のWFFSキャリアを知りました。オルデンブルグ種のDodo weihgand号(3歳、父Diamond Hit)と、同じくFurst William号(7歳、父Furst Willhelm)。

 前者の名前を見て、ちょっと、うん?となった方、その通りです。ドードー号は、あのウェイヒゴールド号(牝14、イザベル・ワースのトップホース)の孫。母がゴールドの娘なのだけど、たぶん胚移植(Embryo Transfer、受精した胚を代理母に着床させて産ませる。冷凍精液の使用といい、馬術用の馬の生産には、サラブレッドでは思いもよらぬほど何でもありなのですよ)で産まれた娘だな…

 この2頭には、ともにFuerst Heinrich号の血が入ってる(それぞれ母の父、父の父)。ハインリッヒ号の父はFlorestan1号で、このフロレスタン1号はFurioso2号の孫…で、このフリオーソ2号の血脈というのが、カリプソ2号のそれに勝るとも劣らぬWFFSの淵叢。実のところ、そもそもカリプソの祖先に、フリオーソの血が入っているというほうが正しいかも…話を戻すと、ハインリッヒ号の父フロレスタン1号は、自身キャリアの産駒を出していて、彼自身キャリアだった疑いが強い。当然、ハインリッヒ号にもキャリアの疑いがかかるけれど、ハインリッヒ号はすでに10年以上前に早世しているので調べようがない。

 精液はまだあるかもしれないし、それでWFFSの検査ができそうにも思うけど、どうなんだろうな。が、「検査の結果ノンキャリア」とか精液の売買業者のHPに出てても、あまり信用ならないかも。上のハインリッヒ号の産駒でキャリア発覚したウィリアム号の業者のページには、「negative(陰性。後ろのN/Nはノンキャリアのこと。キャリアはWFFN/NかN/WFFN)」と堂々と書いてあったし(あと、馬齢もおかしい、たぶん父馬のと間違えてる)。

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2019年1月11日 (金)

ショッケモールのスタリオン・ステーションで7頭のWFFSキャリア判明

*WFFSとは、父方の遺伝子のひとつ×母方の遺伝子のひとつが共に異常な場合、胎児を死にいたらしめる遺伝病。片方が異常で片方が正常な場合、胎児はキャリアとなるけれど、正常に産まれて心身に異常はない。しかし、キャリア同士が交配されると、25%の確率で発症する。

 経済的損失を惜しむあまり自馬のWFFS検査結果をひた隠しにしてきたドイツ、それでも発表した牧場もないではなかったのに、トーティラスはじめ馬産界有数のスタリオンを有するポール・ショッケモールのステーションは、とうとう去年中は結果を隠し切って押し通してしまいました(そういえば、12月にあったはずのFEI関係の会議はどうなったんだろう)。が、今年1月1日から有効化されたドイツの法改正により、ドイツ国内でも発表が強制に。その結果、発表されたのがドレッサージュホースでは4頭のWFFSキャリア、すなわちFursten-Look(父Furstenball), Furst Toto(父Furstenball), Top Gear(父Totilas), Bluetooth(父Bon Coeur)。

 このうち二頭の父がFurstenballだし、また一族的にも疑惑たっぷりだったから、てっきりFurstenball自身キャリアだったんだろうと思ったけど、どうやら両者ともに母方からの遺伝のよう(いずれも母方にLondonderry号の血が入ってる。ロンドンデリーはきわめて遺伝力の強いWFFSキャリア)。また、トップギア号の父はあのトーティラス号(ファーストトト号の母父も)だけど、これも母方(キャリアのDon Fredericoが母父)からだと思われます。もう1頭のブルートゥース号は、これはたぶん父のボンソワール号から(Calypuso2号にさかのぼる。カリプソ2は、全兄弟のカリプソ1、父のコルドラブレヤ号ともども、ロンドンデリー一族にも劣らぬ強烈な遺伝力を持つキャリア一族の始祖の1頭)(ただし、ボンソワール自身はノンキャリアだとの情報もアリ)。
 なお、疑惑だったフューステンボール号は、同じくショッケモールの厩舎に属していて同じく検査を受けたはずだから、クロでなかった以上、シロだと思われます。
 それにしても、キャリアの1頭のフューステンルック号は、ヤングスタリオンの世界大会でも好成績をおさめたほどの馬…その検査結果をひた隠しにして、「牝馬さえキャリアでなければ問題ない」と口を拭って供用を続けてきたというのは、たとえその言の通りだとしても、実におもしろからぬ腹のうちだと言わざるを得ません。実害はないにしろ、実際には不愉快があまりある感じ。こんなディーラーに買われたトーティラスが気の毒だ…

 ショージャンプの方面では、Baloue de Rouet(父Balouebet de Rouet)―発表以前にすでに話題になっていたようだけど―, Action Blue(父Chacco-Blue), Chacgrano(父Chacco-Blue)の3頭がキャリア。父が同じ2頭は、おそらく父チャコブルー号からの遺伝(カリプソ2号の息子コンテンダー号からの分かれ。チャコブルー自身も高確率でキャリア)、もう1頭もたぶん父方からで、やはりコンテンダー号から血が入ってます。
 この”カリプソ系”、ショージャンプの馬で頭文字がCの馬はたいがいそうなのだけど、Cがついてなくても血統図を探せば必ずどこかにCが見つかると言っていいほどの普遍的血脈。優秀な血脈であればこそだけど、同時にキャリア血脈でもあり、しかもハノーヴァー種などのドイツ原産改良馬はけっこう近親交配を辞さないから、相当大変なことになっている(たとえば上記のチャコブルー号はホルスタインの血が濃いmecklenburgerという馬種だけど、5代目までの血統表に3回コルドラブレヤ号が出て来る)…Cに石を投げればキャリアに当たる、みたいな感覚さえないでもない…

 近日中にはオルデンブルグ種の組織も検査結果を明かす由で、いよいよいろんなことがわかってくるでしょう。オルデンブルグやホルスタイン種もけっこうに怪しくて、ハノーヴァー種とのつながりも浅くないので、ブリーダーたちは戦々恐々だろうな…ハノーヴァーといえば、今や大人気のDancier号もあやしくなってきた(孫と母父の分かれにキャリア輩出)。ダンシエール号の母方の曽祖父は、ロンドンデリー号の父と同一馬(Lauries Crusador号)。ドイツの掲示板で、WFFSの遺伝子はロンドンデリーの母方からのものだ、とのコメントがあったけれど、さて、どんなものだろう…

追記:ダンシエールはシロの由(ドイツのステーション・ツェレが繋養先だったけど、先日発表されたキャリアの中に入っていない。なお、ダンシエール自身は去年亡くなっている。ついでにダンシエールの産駒ドン・ノブレス号―キャリア発覚したドン・K号の父―もシロ。)

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2018年10月17日 (水)

ハノーヴァーWFFS血統一覧(仮)

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 まだわからない部分もずいぶんあるけど、作りたくなって作ってみた。

 Pik Asの系統については、あやしいのはPik Bube1からかもしれない(あやしいとすれば)。RafaelにはFrioso2の血統も入ってるし、Don Vinoに関しては、母父トラケナーのConsulに疑わしいフシがあるから(この一覧に祖先が見当たらないキャリアDon Fredericoの母父がやはりConsul)。一方で、Pik Bube1から血を引くBlue Hors Venezianoは、父がシロのヴィヴァルディ、母父もたぶんシロのドナホールだから、母母のラインからきたとしか思えない。もっとも、これだけではまだ証拠不十分だけど…。

(ドナホールをシロと仮定するのは、これがクロだったら今までにWFFSの罹患馬が隠しようもなくどっさり見つかってると思われるから。それくらいドナホールは膨大に使われているし、直子のスタリオンも多い。しかし、全否定する根拠はない…検査結果を見るまでは(直子のDon Schufroは、ブルーホースの検査でシロと出ている19.1.17追記:シュフロはキャリアと発表!老齢のため当時未検査だった)))。

 同じことはFrioso、Frioso2の系統にも言える。彼らからキャリアの子孫まで、あまりにも代を重ねすぎているきらいがある。この一覧がもし正しかったとしたら、キャリアにいたるまでのスタリオン、―錚々たるものだけど―、は、すべてキャリアだということになるが、ちょっとそれはありえないことのように思われる(とはいえ、ありえてもおかしくはない)。

 これらに引き換え、疑う余地なくキャリア一族と思われるのは、Cor De La Bryere、Calypso2の血統。直系の子孫から、代をそれほど重ねることなく、つぎつぎにキャリアを輩出している。なお、この血統と、Frioso2の血統は、ショー・ジャンプの馬の名門血統でもある。

 それにしても、今春ショッケモールは「ドイツでWFFSの罹患馬は出ていない」のを建前にスタリオンの検査を実施しなかったけど、これほど怪しい血統、ことにCalypso2の系統をさかんに用いながら、ハノーヴァー種に罹患馬が全然出なかったとは到底信じられない。今年のWFFS騒動の発端を作ったのは北米のスタッドだったけど、当のスタリオンはまさしくハノーヴァー種(Frioso2の系統)だった。

 ドイツのハノーヴァーのスタリオンの全頭検査を実施したら、ハッキリ言って、目も当てられない結果になる恐れが十分にある(わかりきっているから一覧に入れなかったけど、Lauries Crusador、Londonderryのラインもキャリア一族。…で、今気がついたけど、母父がこの系統で、キャリアであるSarotti Mokka Sahne、父がFrioso2系のSolimanだった。Solimanは例のWFFS騒動の嚆矢となった北米のスタリオンの父…WFFSの遺伝子は、こちらの影響だったかもしれない。もしそうなら、Solimanおよびその父Sandro Hitがキャリアである可能性は非常に高い)。

 ハノーヴァーには何だかかなり煮詰まった血統が多いように思う。同じ馬の名を、一頭の血統表の中に繰り返し見ることがしばしばあるし、同じ馬から出た血筋を父方・母方両方に持つ馬もいる。Pik Bube1とかCalypuso 2とか数字がついている馬は全兄弟のスタリオンがいるということだし、子孫をその母/祖母に交配するいわゆる戻し交配が血統中に見られる馬さえいる。遺伝病であるWFFSのキャリアが、まずハノーヴァーに見つかったこともわかる気がするし、ハノーヴァーを作り出したドイツが、スタリオンの検査に消極的なことも、わかる気がする。同じ系統、同じ血統が繰り返し、また重ねて交配されている例が非常に多いだけに、そのなかにキャリアのスタリオンが一頭でもいれば、たちまちその遺伝子が蔓延するようになるのは当然のことだろう。こう考えると、「ハノーヴァーはWFFS罹患率が高い」とする調査は、対象となった頭数こそ少なけれ、的を射ていたと言えそうである。

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2018年10月15日 (月)

あやしいハノーヴァー種

 ドイツのスタリオン・ステーションに繋養されているハノーヴァー種(ドイツ原産の馬種、主に馬術用)の有名スタリオンにとうとうWFFSが発覚したばかりの折も折、ユーロドレッサージュで「素晴らしいハノーヴァーの血統の歴史」みたいな長大な記事が掲載されました。今度行われるハノーヴァーのライセンス取得試験に向けて、みたいなスタンスだけど、どう考えても「ハノーヴァーの血統には気をつけろ」的警告にしか見えない。

(WFFSは遺伝病のひとつ、キャリア同士の交配で25%の確率で新生児に致死的身体異常をもたらす。今春アメリカでニュースになり、その後欧州でも騒がれて、オランダやスウェーデンは登録スタリオンの強制検査を敢行したが、デンマークは書面の注意のみ、ドイツはほとんど無視を決め込んだ。FEIの兄弟組織であるWBFSHはというと、12月の国際会議まで問題を棚上げ(だから組織としてはまだほとんど何もしていない)。今ごろドイツが検査を始めたのは、この12月の会議が念頭にあるのでしょう。)

(なお、日和見デンマークでも、ブルーホースやヘルグストランドのような有名スタッドは自主検査と結果の公表をしています(後者は最初無視の構えだったが)。しかしドイツではショッケモールはじめほとんどのスタッドが今だに知らんぷり。「牝馬を検査してから配合すればいいだけの話」というスタンスです。)

 私もいくらかWFFSが発覚したハノーヴァーやその血統の入ったスタリオンの血統表をネットでいじってみました。

まず、ユーロドレッサージュの記事によると、ハノーヴァーのブラッドラインは、

1.古いオリジナル血統(Eライン、Dライン、Gライン。馬名の頭文字にそれぞれE、D、Gがつく。なお、始祖の頭文字を産駒につけるのは他の血統でも同じ。) 
2.第二次世界大戦後、導入された血統 
3.古い血統をベースにした新しいオリジナル血統 
4.近年他種から導入された血統
 の4つらしく思われる。これは主にスタリオンの出入りから分けたもので、実際は複雑に入り混じってると思うけど。

 2.にはトラケナーやサラブレッド、4.にはホルスタインやフランス産馬がよく見られる由。

 キャリアの発生したブラッドラインの根幹馬、その番号、そして判明したキャリアの名を挙げると、

・Lauries Crusador(3)…Londonderry, London time, Blue horse Londoner(この3頭は親、子、孫)。ほかBlue hors Emilio、Don Index、Sarotti Mokka Sahne 。

・Calypso II(4、父はセルフランセ、自身はホルスタイン)…Connaisseur、Balou Peggio、Chivas、Comte、Edward、Total US(3代母の父が直子Contenderの子)。この系統はジャンプの名スタリオンも出しており、ジャンパーも検査することになったら、えらいことになりそうです。

・FriosoⅡ(4、フランス産サラブレッド)(遠祖なのであいまいだが)…Don Romanov、Skovens Rafael、For Sure、Guardian S

・Pic As(2、サラブレッド)(これも遠祖だが、孫くらいになると近い)…Don Vino、Skovens Rafael、Botticelli、Connaisseur、Blue hors Veneziano

 ついでに、オランダ温血種でのキャリアに多い(Kossはヘルデルラント種だけど、オランダ温血種のライセンスを持ってる)のは、

・El Corona(ホルスタイン)…Apache、Habanna、Koss、Everdale。Guardian SはEl Coronaの母父Dolto(トラケナー)が、ReginoにはEl Coronaの父Amorが入ってる(どっちがシロかクロかわからない→ガーディアンSにはフリオーソ2も入ってるから、ドルトはシロかな?)。

(あと、トラケナーだけどConsulもあやしいかも。これ以外に、キャリアのDon Fredericoに思い当たる血筋がないし、キャリアのDon Vinoの母の父がこれ)

 遠祖たちは、根幹種牡馬みたいなものだから、どの馬をたどっても行き着く、という部分もあり、疑いをかけるには根拠が薄いんだけど…むしろ他馬と交配されたその子や孫の血統がアレなのかもしれない。あと母馬の姉妹関係とかも気になる。

 ハノーヴァーの交配は、かなり近親交配が目立つ…ドナホールなんて、へたすると一頭に3回くらい入っちゃう。健康によくなさそう…(ドナホールがキャリアだったらすごいことになるだろうけど、しかしまだ可能性は排除できないな。)

 もう少しキャリアが公表されたら、あやしい候補を絞れるのだけど。なお、ハノーヴァーの歴史的血統について興味のある人はこれをどうぞ。
 ついでに、まだ発表はないが、まずキャリアと思われるスタリオン。
 
・Contendro、Conteur、Continue、EmbassyⅠ…前三者は頭文字でわかるようにCalypsoⅡの子孫たち。EmbassyⅠはEライン出身だけど、祖母の父がCalypsoⅡ。
大種牡馬だけに、遺伝力が強いようです(しかも重宝されて、全兄弟とかもいっぱいいるみたい)(カリプソ2の父もキャリアだったみたいだが、これがまた遺伝力が強く、また重宝されてて…(´Д⊂グスン)…

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