WFFS関連

2019年1月31日 (木)

ボッティチェリ号、去勢される

 去年、デンマークのヘルグストランドのスタリオン・ステーションでのWFFS検査で、キャリア判明していたボッティチェリ号が、去勢されて渡米したと報じられました。

 

 渡米自体は、購買主がアメリカ在だからすでに決まっていた―購買されたのはhorsesnlによると去年10月の由、すでにキャリア判明済みのころ―そうだけど、去勢は初耳。まだ7歳の若さで、コンテストにも入賞歴があり、キャリア判明するまではヘルグストランドのステーションでも大いにPRしていたほどの馬ですが、やはりWFFSではブリーディングには限界があると判断したのでしょう。その点、欧州と米国とでは考え方に差がある(欧州ではキャリア同士でなければブリーディングに差し支えないというのが今のところ主流)のかも。
 また、どうも欧州の生産者は、優れたスタリオンは欧州の外に出したがらないみたいだから(たとえばトーティラス産駒のスタリオンは、北米にはほとんどいないそうな。生産界には独占禁止法みたいなのはないのか)、渡米前提の購買がきまった段階で、去勢も条件になったのかも…そもそもWFFSキャリアでなければ、渡米を許可することもなかったのかもしれない(購買主のシャーロット・ジョースト(55)、―デンマーク生まれのアメリカ人グランプリ・ライダー、―は、ボッティチェリ以外にやはりヘルグストランドからグランドギャラクシーウィン号という非常に人気のあるスタリオンを買っているけど、こちらはいったん渡米はしてもシーズンには欧州に戻る予定の由。)

(このジョースト、上記の2頭のほかにもデンマーク種の若馬チャンピオンをとったチャップリン号(父ゾニック)も購買してて、どんだけ金持ちなのか―特にグランドギャラクシーウィンはとびきり高額だったはず―と思ったけど、ちょっと調べたところ、やっぱり企業経営者(馬術関連のグッズ)だった。馬術をはじめたのが35歳で、オリンピックに出るのが夢って、―悪いとは言わないけれども、―うーん、―正直あまりガルやハンスピーターのようなプロ・ライダーの邪魔はしてほしくないな…)

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2019年1月17日 (木)

ショッケモール、WFFSによる死産に保証金?

 この記事によると、つい先日11日、ようやく重い腰を上げて所有スタリオンのWFFS検査結果を公表したポール・ショッケモールが、妙な提案を発表しました。「自分のステーションで供用したスタリオンからWFFSで死亡した仔馬が産まれた場合、1万ユーロ(約120万円)を支払う」というもの。しかもこれは「弁償」ではなく、いわばCMのようなもので、”メディアによって誇張され報道されているWFFSが、実際はきわめてリスクの低い症例であることをアピールするため”であるらしい。

 ショッケモールのこの説は、いわゆるツッコミどころ満載というもの。

1.ショッケモールのスタッドは、WFFSが問題化した去年春から今までずっと、自馬の検査結果を伏せていた。今年1月やっと公表したのは、ドイツの法律が変わったから伏せておけなくなり、やむなくのこと。

2.即時強制検査に踏み切った国(オランダ)のスタッドはもちろん、日和見・無視の国(デンマーク、ドイツ)でも、自主検査/公表を行ったスタッドはあった(大所ではデンマークのブルーホース、個人経営とかではもっとあったはず)のに、ショッケモール(ドイツ有数の大所!)は徹底無視。

3・自分とこの検査結果自体はずっと把握していたはずなのに「配合する牝馬さえノンキャリアなら大丈夫」と言い放ち、牝馬のオーナーに自主検査を押し付ける一方で、キャリアとわかってたスタリオンをそのまま供用し続けた。

4.WFFSで死亡したと確認できたら1万ユーロ支払うと言っているけれど、WFFS(キャリア同士の配合で25%の確率で発症)を発症した胎児はほとんど流産し、生きて産まれてくる場合は非常にまれ。

5.WFFSで死亡した仔馬がほんとに出ても、「たしかにWFFSである」と誰に保証してもらうのか、そしてその費用は?

 WFFSが注意深く対処さえすれば脅威でない症例であるのはたしかであれ、一番問題なのは、ショッケモールが今までとってきた対応の腹黒さ。しかも頑固で、あくまで「おれは悪くない」というスタンスで、メディアが事実をねじ曲げている(それなら去年中にさっさと検査結果という事実を公表すればよかったじゃないか)と責任転嫁。まるでアメリカの大統領みたいだ…
 なお、ショッケモールにとっては、1万ユーロなんぞハシタ金であるのは言うまでもありません。トーティラスをたった4回供用すれば、もう元が取れる金額ナリ。

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ブルーホース・ドン・シュフロ号、WFFSキャリア判明

 デンマークのブルーホース・スタッドが、衝撃の発表を行いました―著名スタリオンのブルーホース・ドン・シュフロ号が、WFFSのキャリアであると発表されたのです。

 ブルーホースは昨年の5月、WFFSが問題になった時、いち早く自主的に所有スタリオンの検査を行い(同じデンマークのヘルグストランドは当時、座視)3頭のキャリアを発表していました。そのときドン・シュフロの名前がなかったので、彼はノンキャリアだと思っていたのですが、あにはからんや、当時の検査は”available stallions”に対してのみ行われたもの―つまり、当時実際に精液を採取できる種牡馬に対してのみだったので、すでに25歳と老境のドン・シュフロには検査が行われていなかったのですね。それにしても、冷凍精液の販売は依然として行っていたのだから、未検査だったというのはどうかと思うけれど…

 もっとも、ドン・シュフロがあやしいということはすでに噂になっていたようで(たしかに怪しかった)、今回の検査は「発見」というより「裏付け」のようなものにも見えます。たしかに、ドン・シュフロがキャリアだとわかれば、今まで由来がわからなかったキャリアらの由来が一気に片付く。…それと、今まで「○○スタッドは全頭検査済み」とかで安心していたけれど、こういうことがあったからには、「○○号」と検査された馬名まで確認しないと、ノンキャリアだとは断言できませんね。

 なお、当のドン・シュフロ号のWFFS遺伝子の由来ですが、私は今のところ母父のPik Bube1号からじゃないかと思っています。

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2019年1月15日 (火)

Gestut SpreheでWFFSキャリア4頭

 ドイツのGestut Sprehe―名前でわかる通り、デスペラドス号とのコンビで名高かったKristina Bröring-Spreheの一族が経営するスタリオン・センター。なお、彼女の父親は、同時に冷凍食品メーカーの経営責任者でもある。手広くやってるな―で、新たに4頭のWFFSキャリアが発見されました。

 この4頭は、

Amazon号…父A la Carte号がキャリア

Chico's Boy号…祖母父Cor de la Bryere号が疑い濃厚キャリア。父Carpaccio号もCor de la Bryereの血統だからあやしい

Dicapo号…父方はセルフランセ種だからよくわからないけど、母馬はCor de la Bryere号、Amor号と疑わしい血統を引いている。

 ついでに、最近Ladykiller号の血族―Landgraf1, Lordなども疑わしく思われるようになってきた(上記のDicapoの母馬にもその血が入っている)。レディキラー号はサラブレッド。キャリアLondonderry号の父Lorlie's Crusador号もサラブレッドだったし、結構サラブレッドにもWFFSは多いんじゃないか…?

 上記の3頭はジャンパー。あと1頭はドレッサージュ馬で、

Santo Domingo号…母父が、先日キャリアかもと発覚したFuerst Heinrich号

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2019年1月12日 (土)

WFFSキャリア、さらに2頭

 ユーロドレッサージュにはまだだけど、オランダのオンライン馬術誌Horsesnlを見て、さらに2頭のWFFSキャリアを知りました。オルデンブルグ種のDodo weihgand号(3歳、父Diamond Hit)と、同じくFurst William号(7歳、父Furst Willhelm)。

 前者の名前を見て、ちょっと、うん?となった方、その通りです。ドードー号は、あのウェイヒゴールド号(牝14、イザベル・ワースのトップホース)の孫。母がゴールドの娘なのだけど、たぶん胚移植(Embryo Transfer、受精した胚を代理母に着床させて産ませる。冷凍精液の使用といい、馬術用の馬の生産には、サラブレッドでは思いもよらぬほど何でもありなのですよ)で産まれた娘だな…

 この2頭には、ともにFuerst Heinrich号の血が入ってる(それぞれ母の父、父の父)。ハインリッヒ号の父はFlorestan1号で、このフロレスタン1号はFurioso2号の孫…で、このフリオーソ2号の血脈というのが、カリプソ2号のそれに勝るとも劣らぬWFFSの淵叢。実のところ、そもそもカリプソの祖先に、フリオーソの血が入っているというほうが正しいかも…話を戻すと、ハインリッヒ号の父フロレスタン1号は、自身キャリアの産駒を出していて、彼自身キャリアだった疑いが強い。当然、ハインリッヒ号にもキャリアの疑いがかかるけれど、ハインリッヒ号はすでに10年以上前に早世しているので調べようがない。

 精液はまだあるかもしれないし、それでWFFSの検査ができそうにも思うけど、どうなんだろうな。が、「検査の結果ノンキャリア」とか精液の売買業者のHPに出てても、あまり信用ならないかも。上のハインリッヒ号の産駒でキャリア発覚したウィリアム号の業者のページには、「negative(陰性。後ろのN/Nはノンキャリアのこと。キャリアはWFFN/NかN/WFFN)」と堂々と書いてあったし(あと、馬齢もおかしい、たぶん父馬のと間違えてる)。

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2019年1月11日 (金)

ショッケモールのスタリオン・ステーションで7頭のWFFSキャリア判明

*WFFSとは、父方の遺伝子のひとつ×母方の遺伝子のひとつが共に異常な場合、胎児を死にいたらしめる遺伝病。片方が異常で片方が正常な場合、胎児はキャリアとなるけれど、正常に産まれて心身に異常はない。しかし、キャリア同士が交配されると、25%の確率で発症する。

 経済的損失を惜しむあまり自馬のWFFS検査結果をひた隠しにしてきたドイツ、それでも発表した牧場もないではなかったのに、トーティラスはじめ馬産界有数のスタリオンを有するポール・ショッケモールのステーションは、とうとう去年中は結果を隠し切って押し通してしまいました(そういえば、12月にあったはずのFEI関係の会議はどうなったんだろう)。が、今年1月1日から有効化されたドイツの法改正により、ドイツ国内でも発表が強制に。その結果、発表されたのがドレッサージュホースでは4頭のWFFSキャリア、すなわちFursten-Look(父Furstenball), Furst Toto(父Furstenball), Top Gear(父Totilas), Bluetooth(父Bon Coeur)。

 このうち二頭の父がFurstenballだし、また一族的にも疑惑たっぷりだったから、てっきりFurstenball自身キャリアだったんだろうと思ったけど、どうやら両者ともに母方からの遺伝のよう(いずれも母方にLondonderry号の血が入ってる。ロンドンデリーはきわめて遺伝力の強いWFFSキャリア)。また、トップギア号の父はあのトーティラス号(ファーストトト号の母父も)だけど、これも母方(キャリアのDon Fredericoが母父)からだと思われます。もう1頭のブルートゥース号は、これはたぶん父のボンソワール号から(Calypuso2号にさかのぼる。カリプソ2は、全兄弟のカリプソ1、父のコルドラブレヤ号ともども、ロンドンデリー一族にも劣らぬ強烈な遺伝力を持つキャリア一族の始祖の1頭)(ただし、ボンソワール自身はノンキャリアだとの情報もアリ)。
 なお、疑惑だったフューステンボール号は、同じくショッケモールの厩舎に属していて同じく検査を受けたはずだから、クロでなかった以上、シロだと思われます。
 それにしても、キャリアの1頭のフューステンルック号は、ヤングスタリオンの世界大会でも好成績をおさめたほどの馬…その検査結果をひた隠しにして、「牝馬さえキャリアでなければ問題ない」と口を拭って供用を続けてきたというのは、たとえその言の通りだとしても、実におもしろからぬ腹のうちだと言わざるを得ません。実害はないにしろ、実際には不愉快があまりある感じ。こんなディーラーに買われたトーティラスが気の毒だ…

 ショージャンプの方面では、Baloue de Rouet(父Balouebet de Rouet)―発表以前にすでに話題になっていたようだけど―, Action Blue(父Chacco-Blue), Chacgrano(父Chacco-Blue)の3頭がキャリア。父が同じ2頭は、おそらく父チャコブルー号からの遺伝(カリプソ2号の息子コンテンダー号からの分かれ。チャコブルー自身も高確率でキャリア)、もう1頭もたぶん父方からで、やはりコンテンダー号から血が入ってます。
 この”カリプソ系”、ショージャンプの馬で頭文字がCの馬はたいがいそうなのだけど、Cがついてなくても血統図を探せば必ずどこかにCが見つかると言っていいほどの普遍的血脈。優秀な血脈であればこそだけど、同時にキャリア血脈でもあり、しかもハノーヴァー種などのドイツ原産改良馬はけっこう近親交配を辞さないから、相当大変なことになっている(たとえば上記のチャコブルー号はホルスタインの血が濃いmecklenburgerという馬種だけど、5代目までの血統表に3回コルドラブレヤ号が出て来る)…Cに石を投げればキャリアに当たる、みたいな感覚さえないでもない…

 近日中にはオルデンブルグ種の組織も検査結果を明かす由で、いよいよいろんなことがわかってくるでしょう。オルデンブルグやホルスタイン種もけっこうに怪しくて、ハノーヴァー種とのつながりも浅くないので、ブリーダーたちは戦々恐々だろうな…ハノーヴァーといえば、今や大人気のDancier号もあやしくなってきた(孫と母父の分かれにキャリア輩出)。ダンシエール号の母方の曽祖父は、ロンドンデリー号の父と同一馬(Lauries Crusador号)。ドイツの掲示板で、WFFSの遺伝子はロンドンデリーの母方からのものだ、とのコメントがあったけれど、さて、どんなものだろう…

追記:ダンシエールはシロの由(ドイツのステーション・ツェレが繋養先だったけど、先日発表されたキャリアの中に入っていない。なお、ダンシエール自身は去年亡くなっている。ついでにダンシエールの産駒ドン・ノブレス号―キャリア発覚したドン・K号の父―もシロ。)

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2018年10月17日 (水)

ハノーヴァーWFFS血統一覧(仮)

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 まだわからない部分もずいぶんあるけど、作りたくなって作ってみた。

 Pik Asの系統については、あやしいのはPik Bube1からかもしれない(あやしいとすれば)。RafaelにはFrioso2の血統も入ってるし、Don Vinoに関しては、母父トラケナーのConsulに疑わしいフシがあるから(この一覧に祖先が見当たらないキャリアDon Fredericoの母父がやはりConsul)。一方で、Pik Bube1から血を引くBlue Hors Venezianoは、父がシロのヴィヴァルディ、母父もたぶんシロのドナホールだから、母母のラインからきたとしか思えない。もっとも、これだけではまだ証拠不十分だけど…。

(ドナホールをシロと仮定するのは、これがクロだったら今までにWFFSの罹患馬が隠しようもなくどっさり見つかってると思われるから。それくらいドナホールは膨大に使われているし、直子のスタリオンも多い。しかし、全否定する根拠はない…検査結果を見るまでは(直子のDon Schufroは、ブルーホースの検査でシロと出ている19.1.17追記:シュフロはキャリアと発表!老齢のため当時未検査だった)))。

 同じことはFrioso、Frioso2の系統にも言える。彼らからキャリアの子孫まで、あまりにも代を重ねすぎているきらいがある。この一覧がもし正しかったとしたら、キャリアにいたるまでのスタリオン、―錚々たるものだけど―、は、すべてキャリアだということになるが、ちょっとそれはありえないことのように思われる(とはいえ、ありえてもおかしくはない)。

 これらに引き換え、疑う余地なくキャリア一族と思われるのは、Cor De La Bryere、Calypso2の血統。直系の子孫から、代をそれほど重ねることなく、つぎつぎにキャリアを輩出している。なお、この血統と、Frioso2の血統は、ショー・ジャンプの馬の名門血統でもある。

 それにしても、今春ショッケモールは「ドイツでWFFSの罹患馬は出ていない」のを建前にスタリオンの検査を実施しなかったけど、これほど怪しい血統、ことにCalypso2の系統をさかんに用いながら、ハノーヴァー種に罹患馬が全然出なかったとは到底信じられない。今年のWFFS騒動の発端を作ったのは北米のスタッドだったけど、当のスタリオンはまさしくハノーヴァー種(Frioso2の系統)だった。

 ドイツのハノーヴァーのスタリオンの全頭検査を実施したら、ハッキリ言って、目も当てられない結果になる恐れが十分にある(わかりきっているから一覧に入れなかったけど、Lauries Crusador、Londonderryのラインもキャリア一族。…で、今気がついたけど、母父がこの系統で、キャリアであるSarotti Mokka Sahne、父がFrioso2系のSolimanだった。Solimanは例のWFFS騒動の嚆矢となった北米のスタリオンの父…WFFSの遺伝子は、こちらの影響だったかもしれない。もしそうなら、Solimanおよびその父Sandro Hitがキャリアである可能性は非常に高い)。

 ハノーヴァーには何だかかなり煮詰まった血統が多いように思う。同じ馬の名を、一頭の血統表の中に繰り返し見ることがしばしばあるし、同じ馬から出た血筋を父方・母方両方に持つ馬もいる。Pik Bube1とかCalypuso 2とか数字がついている馬は全兄弟のスタリオンがいるということだし、子孫をその母/祖母に交配するいわゆる戻し交配が血統中に見られる馬さえいる。遺伝病であるWFFSのキャリアが、まずハノーヴァーに見つかったこともわかる気がするし、ハノーヴァーを作り出したドイツが、スタリオンの検査に消極的なことも、わかる気がする。同じ系統、同じ血統が繰り返し、また重ねて交配されている例が非常に多いだけに、そのなかにキャリアのスタリオンが一頭でもいれば、たちまちその遺伝子が蔓延するようになるのは当然のことだろう。こう考えると、「ハノーヴァーはWFFS罹患率が高い」とする調査は、対象となった頭数こそ少なけれ、的を射ていたと言えそうである。

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2018年10月15日 (月)

あやしいハノーヴァー種

 ドイツのスタリオン・ステーションに繋養されているハノーヴァー種(ドイツ原産の馬種、主に馬術用)の有名スタリオンにとうとうWFFSが発覚したばかりの折も折、ユーロドレッサージュで「素晴らしいハノーヴァーの血統の歴史」みたいな長大な記事が掲載されました。今度行われるハノーヴァーのライセンス取得試験に向けて、みたいなスタンスだけど、どう考えても「ハノーヴァーの血統には気をつけろ」的警告にしか見えない。

(WFFSは遺伝病のひとつ、キャリア同士の交配で25%の確率で新生児に致死的身体異常をもたらす。今春アメリカでニュースになり、その後欧州でも騒がれて、オランダやスウェーデンは登録スタリオンの強制検査を敢行したが、デンマークは書面の注意のみ、ドイツはほとんど無視を決め込んだ。FEIの兄弟組織であるWBFSHはというと、12月の国際会議まで問題を棚上げ(だから組織としてはまだほとんど何もしていない)。今ごろドイツが検査を始めたのは、この12月の会議が念頭にあるのでしょう。)

(なお、日和見デンマークでも、ブルーホースやヘルグストランドのような有名スタッドは自主検査と結果の公表をしています(後者は最初無視の構えだったが)。しかしドイツではショッケモールはじめほとんどのスタッドが今だに知らんぷり。「牝馬を検査してから配合すればいいだけの話」というスタンスです。)

 私もいくらかWFFSが発覚したハノーヴァーやその血統の入ったスタリオンの血統表をネットでいじってみました。

まず、ユーロドレッサージュの記事によると、ハノーヴァーのブラッドラインは、

1.古いオリジナル血統(Eライン、Dライン、Gライン。馬名の頭文字にそれぞれE、D、Gがつく。なお、始祖の頭文字を産駒につけるのは他の血統でも同じ。) 
2.第二次世界大戦後、導入された血統 
3.古い血統をベースにした新しいオリジナル血統 
4.近年他種から導入された血統
 の4つらしく思われる。これは主にスタリオンの出入りから分けたもので、実際は複雑に入り混じってると思うけど。

 2.にはトラケナーやサラブレッド、4.にはホルスタインやフランス産馬がよく見られる由。

 キャリアの発生したブラッドラインの根幹馬、その番号、そして判明したキャリアの名を挙げると、

・Lauries Crusador(3)…Londonderry, London time, Blue horse Londoner(この3頭は親、子、孫)。ほかBlue hors Emilio、Don Index、Sarotti Mokka Sahne 。

・Calypso II(4、父はセルフランセ、自身はホルスタイン)…Connaisseur、Balou Peggio、Chivas、Comte、Edward、Total US(3代母の父が直子Contenderの子)。この系統はジャンプの名スタリオンも出しており、ジャンパーも検査することになったら、えらいことになりそうです。

・FriosoⅡ(4、フランス産サラブレッド)(遠祖なのであいまいだが)…Don Romanov、Skovens Rafael、For Sure、Guardian S

・Pic As(2、サラブレッド)(これも遠祖だが、孫くらいになると近い)…Don Vino、Skovens Rafael、Botticelli、Connaisseur、Blue hors Veneziano

 ついでに、オランダ温血種でのキャリアに多い(Kossはヘルデルラント種だけど、オランダ温血種のライセンスを持ってる)のは、

・El Corona(ホルスタイン)…Apache、Habanna、Koss、Everdale。Guardian SはEl Coronaの母父Dolto(トラケナー)が、ReginoにはEl Coronaの父Amorが入ってる(どっちがシロかクロかわからない→ガーディアンSにはフリオーソ2も入ってるから、ドルトはシロかな?)。

(あと、トラケナーだけどConsulもあやしいかも。これ以外に、キャリアのDon Fredericoに思い当たる血筋がないし、キャリアのDon Vinoの母の父がこれ)

 遠祖たちは、根幹種牡馬みたいなものだから、どの馬をたどっても行き着く、という部分もあり、疑いをかけるには根拠が薄いんだけど…むしろ他馬と交配されたその子や孫の血統がアレなのかもしれない。あと母馬の姉妹関係とかも気になる。

 ハノーヴァーの交配は、かなり近親交配が目立つ…ドナホールなんて、へたすると一頭に3回くらい入っちゃう。健康によくなさそう…(ドナホールがキャリアだったらすごいことになるだろうけど、しかしまだ可能性は排除できないな。)

 もう少しキャリアが公表されたら、あやしい候補を絞れるのだけど。なお、ハノーヴァーの歴史的血統について興味のある人はこれをどうぞ。
 ついでに、まだ発表はないが、まずキャリアと思われるスタリオン。
 
・Contendro、Conteur、Continue、EmbassyⅠ…前三者は頭文字でわかるようにCalypsoⅡの子孫たち。EmbassyⅠはEライン出身だけど、祖母の父がCalypsoⅡ。
大種牡馬だけに、遺伝力が強いようです(しかも重宝されて、全兄弟とかもいっぱいいるみたい)(カリプソ2の父もキャリアだったみたいだが、これがまた遺伝力が強く、また重宝されてて…(´Д⊂グスン)…

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2018年10月14日 (日)

ロンドンデリー、WFFS陽性発覚

 今春ブリーディング界で大騒ぎになったWFFS(温血種仔馬脆弱症候群)問題ですが、オランダやスウェーデンが国を挙げてスタリオンの検査を行ってウェブ上でその結果を公表したのに対し、徹頭徹尾無視を決め込んだドイツ、その有数のスタリオン・センターであるツェレ国立スタッドでこのほどようやっとWFFS検査が行われ、人気スタリオン・ロンドンデリー号(23歳、父ローリーズクルセイダー)をはじめとする5頭が陽性であることが発表されました。

 ツェレ国立スタッドは、国有としてはドイツ最大のハノーヴァー種のスタリオン・ステーションの由。キャリアが判明したなかで、ロンドンデリー号とロンドンタイム号は父子関係。さらに、デンマーク有数のスタリオン・センターであるブルーホース・スタッドが6月に自主検査でキャリアを公表した3頭のうちの一頭、ブルーホース・ロンドナー号はロンドンタイム号の産駒です。ロンドンデリー号は2013年度のハノーヴァー種スタリオン・オブ・ザ・イヤーで、当時の登録産駒数は2000頭を上回るということ。

 ツェレでキャリア判明したなかのもう一頭の有名種牡馬・ドン・フレデリコ号(21歳、父ドナホール)は2012年のハノーヴァー種スタリオン・オブ・ザ・イヤー。12年当時で登録された産駒は2500頭以上、そのなかにはヤングホース世界チャンピオンも含まれています。

 ハノーヴァー種のスタリオンは、何となく他種と隔絶されているような感じがあり、たとえばブルーホース・ザック号なら「デンマーク温血種だな」、ヴィヴァルディ号やアパッチ号なら「オランダ温血種だったっけ」とすぐ見当がつくのですが、ロンドンデリー号は名前は聞いたことがありながら、ハノーヴァー種とは知りませんでした。オランダで大人気のスタリオン・トトJr号は、父はオランダ温血種のトーティラスながら母方の血統はすべてハノーヴァーで、自身もハノーヴァー種。トラケナー種ほどではないけれど、ハノーヴァー種も相当血統仲のハノーヴァー濃度が高くないと、ハノーヴァーとして認定されないのかもしれません。

 今春、いろいろな馬種別にWFFSの罹患率を調べた結果を見たことがありますが、ハノーヴァーは目立って罹患率が高かったです。まあ、そのデータは調査した馬の絶対数がとても少なかったので、あまり参考にはならないかもしれませんが、言い方を変えれば、そんな少ない調査数だったにもかかわらず罹患馬が見つかったということで、実際はほんとうにハノーヴァー種のWFFSキャリア数は他と比べて多いのかもしれません。もしそうなら、上に述べたような閉鎖的な血統登録が原因かもしれませんね。

 くだんの表。

https://www.dehoefslag.nl/wp-content/uploads/2018/06/tabel-wffs.png

 ハノーヴァー(Hanoverian)と、ハノーヴァーと本質的には同じと言われるウェストファーレン(Westfalen)が1位、2位なのがどうもね…

 …今、過去記事を見直してみたら、WFFSキャリアのハノーヴァーのスタリオン、たしかに多い!しかも、ドイツは馬種ごとの管理組織や大規模なスタリオン・ステーションによる全頭検査は未施行で、以前に発覚したのは国外のスタリオン・ステーションやオーナーによる自己検査によるものだから、実際数はさらに多いはずと思われる。

・ロンドンデリー(父ローリーズクルセイダー、子ロンドンタイム、孫ブルーホース・ロンドナー)
・ドン・フレデリコ
・コネセール
・フォーシュアー
・トータルUS

 また、両親のいずれかがハノーヴァーというのが、

・ボッティチェリ(父がハノーヴァーのベネトンドリーム)
・ブルーホース・エミリオ(母がハノーヴァー、母の父ローリーズクルセイダー<ロンドンデリーと同じ>)

 ついでに、オルデンブルグ種も、かなり怪しい気がしてきた…

・ブルーホース・ヴェネツィアノ

 ドナホール(オルデンブルグ、しかし父はハノーヴァー、超有名スタリオン)が臭い…

・ボッティチェリ(母方と父方で、それぞれドナホール×Dunjaの娘の組み合わせ)
・コネセール(母の父ドナホール)
・フォーシュアー(5世代中にドナホール×3)
・ドン・フレデリコ(父ドナホール)
・ブルーホース・ヴェネツィアノ(父ドナホール)
・スコヴェンズ・ラファエル(祖父父ドナホール…ただし祖父ドン・シュフロは検査結果シロ19.1.17追記:シュフロはキャリアと発表!老齢のため当時未検査だった)
・スプリングバンクⅡ(ラファエルの子、母祖父ドナホール…母父はデニーロ)(スプリングバンクはドナホールの3×4になるわけ。ついでにローディアマントも3×3)
・トータルUS(母がドナホールの3×3<サー・ドナホールとドン・シュフロ>)
・ハバンナ(父ヴィヴァルドの祖母父)

 ドナホールだらけ。それにしても煮詰まってるな…
 これでほんとにドナホールがクロとなったら、ドイツが頑として調査を拒んだ理由もわかるというもの。

 また、ホルスタイン種のエル・コロナはほぼ間違いなくキャリア。

・コス(ヘルデルラント種だけどオランダ温血種のスタリオンとして大成功、その父)
・エヴァーデール(祖母の父)
・アパッチ(祖母の祖父。アパッチは異父妹がキャリアだから、母系の遺伝のはず)
・ハバンナ(父ヴィヴァルドの母父モンテクリストの父。モンテクリスト、ヴィヴァルドもキャリアの疑い濃厚だな)

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2018年7月27日 (金)

アパッチ号、キャリア発覚

 1回目のテストでノン・キャリアだと発表された後、産駒に次々とキャリアが見つかって、再検査を受けていたアパッチ号が、その結果、実はWFFSキャリアであることが裏付けられました。

 記事によると、アパッチの一度目の検査には血液サンプル(大多数の馬は毛髪サンプルだったけど)が用いられたが、今回は毛髪サンプルで検査が行われ、そして前回とは異なる結果が出たということ。前回の血液サンプルは、他の被験馬との取り違えがあったみたいにも読めるけど、検査の時にヒューマン・エラーが生じたとも書いてある。何にしろ、この時同じように血液サンプルで検査を受けた馬たちも、再検査を受けて、以前と同じ結果を得たとのこと。
 誤診断を出した研究所は大いに遺憾の意を表し、この誤診断から再検査の結果発表までの間にアパッチと交配を行ったブリーダーに対し、来春産まれた仔馬の無料WFFS診断を提供する、と言っている。
 それにしても、アパッチと言えば、オランダ1と言ってよいほどの人気スタリオンで、しかも一度はノンキャリアと言われていただけに、関係者の落胆は察するに余りあるな…

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