WFFS関連

2018年10月17日 (水)

ハノーヴァーWFFS血統一覧(仮)

Hano_4

 まだわからない部分もずいぶんあるけど、作りたくなって作ってみた。

 Pik Asの系統については、あやしいのはPik Bube1からかもしれない(あやしいとすれば)。RafaelにはFrioso2の血統も入ってるし、Don Vinoに関しては、母父トラケナーのConsulに疑わしいフシがあるから(この一覧に祖先が見当たらないキャリアDon Fredericoの母父がやはりConsul)。一方で、Pik Bube1から血を引くBlue Hors Venezianoは、父がシロのヴィヴァルディ、母父もたぶんシロのドナホールだから、母母のラインからきたとしか思えない。もっとも、これだけではまだ証拠不十分だけど…。

(ドナホールをシロと仮定するのは、これがクロだったら今までにWFFSの罹患馬が隠しようもなくどっさり見つかってると思われるから。それくらいドナホールは膨大に使われているし、直子のスタリオンも多い。しかし、全否定する根拠はない…検査結果を見るまでは(直子のDon Schufroは、ブルーホースの検査でシロと出ている))。

 同じことはFrioso、Frioso2の系統にも言える。彼らからキャリアの子孫まで、あまりにも代を重ねすぎているきらいがある。この一覧がもし正しかったとしたら、キャリアにいたるまでのスタリオン、―錚々たるものだけど―、は、すべてキャリアだということになるが、ちょっとそれはありえないことのように思われる(とはいえ、ありえてもおかしくはない)。

 これらに引き換え、疑う余地なくキャリア一族と思われるのは、Cor De La Bryere、Calypso2の血統。直系の子孫から、代をそれほど重ねることなく、つぎつぎにキャリアを輩出している。なお、この血統と、Frioso2の血統は、ショー・ジャンプの馬の名門血統でもある。

 それにしても、今春ショッケモールは「ドイツでWFFSの罹患馬は出ていない」のを建前にスタリオンの検査を実施しなかったけど、これほど怪しい血統、ことにCalypso2の系統をさかんに用いながら、ハノーヴァー種に罹患馬が全然出なかったとは到底信じられない。今年のWFFS騒動の発端を作ったのは北米のスタッドだったけど、当のスタリオンはまさしくハノーヴァー種(Frioso2の系統)だった。

 ドイツのハノーヴァーのスタリオンの全頭検査を実施したら、ハッキリ言って、目も当てられない結果になる恐れが十分にある(わかりきっているから一覧に入れなかったけど、Lauries Crusador、Londonderryのラインもキャリア一族。…で、今気がついたけど、母父がこの系統で、キャリアであるSarotti Mokka Sahne、父がFrioso2系のSolimanだった。Solimanは例のWFFS騒動の嚆矢となった北米のスタリオンの父…WFFSの遺伝子は、こちらの影響だったかもしれない。もしそうなら、Solimanおよびその父Sandro Hitがキャリアである可能性は非常に高い)。

 ハノーヴァーには何だかかなり煮詰まった血統が多いように思う。同じ馬の名を、一頭の血統表の中に繰り返し見ることがしばしばあるし、同じ馬から出た血筋を父方・母方両方に持つ馬もいる。Pik Bube1とかCalypuso 2とか数字がついている馬は全兄弟のスタリオンがいるということだし、子孫をその母/祖母に交配するいわゆる戻し交配が血統中に見られる馬さえいる。遺伝病であるWFFSのキャリアが、まずハノーヴァーに見つかったこともわかる気がするし、ハノーヴァーを作り出したドイツが、スタリオンの検査に消極的なことも、わかる気がする。同じ系統、同じ血統が繰り返し、また重ねて交配されている例が非常に多いだけに、そのなかにキャリアのスタリオンが一頭でもいれば、たちまちその遺伝子が蔓延するようになるのは当然のことだろう。こう考えると、「ハノーヴァーはWFFS罹患率が高い」とする調査は、対象となった頭数こそ少なけれ、的を射ていたと言えそうである。

|

2018年10月15日 (月)

あやしいハノーヴァー種

 ドイツのスタリオン・ステーションに繋養されているハノーヴァー種(ドイツ原産の馬種、主に馬術用)の有名スタリオンにとうとうWFFSが発覚したばかりの折も折、ユーロドレッサージュで「素晴らしいハノーヴァーの血統の歴史」みたいな長大な記事が掲載されました。今度行われるハノーヴァーのライセンス取得試験に向けて、みたいなスタンスだけど、どう考えても「ハノーヴァーの血統には気をつけろ」的警告にしか見えない。

(WFFSは遺伝病のひとつ、キャリア同士の交配で25%の確率で新生児に致死的身体異常をもたらす。今春アメリカでニュースになり、その後欧州でも騒がれて、オランダやスウェーデンは登録スタリオンの強制検査を敢行したが、デンマークは書面の注意のみ、ドイツはほとんど無視を決め込んだ。FEIの兄弟組織であるWBFSHはというと、12月の国際会議まで問題を棚上げ(だから組織としてはまだほとんど何もしていない)。今ごろドイツが検査を始めたのは、この12月の会議が念頭にあるのでしょう。)

(なお、日和見デンマークでも、ブルーホースやヘルグストランドのような有名スタッドは自主検査と結果の公表をしています(後者は最初無視の構えだったが)。しかしドイツではショッケモールはじめほとんどのスタッドが今だに知らんぷり。「牝馬を検査してから配合すればいいだけの話」というスタンスです。)

 私もいくらかWFFSが発覚したハノーヴァーやその血統の入ったスタリオンの血統表をネットでいじってみました。

まず、ユーロドレッサージュの記事によると、ハノーヴァーのブラッドラインは、

1.古いオリジナル血統(Eライン、Dライン、Gライン。馬名の頭文字にそれぞれE、D、Gがつく。なお、始祖の頭文字を産駒につけるのは他の血統でも同じ。) 
2.第二次世界大戦後、導入された血統 
3.古い血統をベースにした新しいオリジナル血統 
4.近年他種から導入された血統
 の4つらしく思われる。これは主にスタリオンの出入りから分けたもので、実際は複雑に入り混じってると思うけど。

 2.にはトラケナーやサラブレッド、4.にはホルスタインやフランス産馬がよく見られる由。

 キャリアの発生したブラッドラインの根幹馬、その番号、そして判明したキャリアの名を挙げると、

・Lauries Crusador(3)…Londonderry, London time, Blue horse Londoner(この3頭は親、子、孫)。ほかBlue hors Emilio、Don Index、Sarotti Mokka Sahne 。

・Calypso II(4、父はセルフランセ、自身はホルスタイン)…Connaisseur、Balou Peggio、Chivas、Comte、Edward、Total US(3代母の父が直子Contenderの子)。この系統はジャンプの名スタリオンも出しており、ジャンパーも検査することになったら、えらいことになりそうです。

・FriosoⅡ(4、フランス産サラブレッド)(遠祖なのであいまいだが)…Don Romanov、Skovens Rafael、For Sure、Guardian S

・Pic As(2、サラブレッド)(これも遠祖だが、孫くらいになると近い)…Don Vino、Skovens Rafael、Botticelli、Connaisseur、Blue hors Veneziano

 ついでに、オランダ温血種でのキャリアに多い(Kossはヘルデルラント種だけど、オランダ温血種のライセンスを持ってる)のは、

・El Corona(ホルスタイン)…Apache、Habanna、Koss、Everdale。Guardian SはEl Coronaの母父Dolto(トラケナー)が、ReginoにはEl Coronaの父Amorが入ってる(どっちがシロかクロかわからない→ガーディアンSにはフリオーソ2も入ってるから、ドルトはシロかな?)。

(あと、トラケナーだけどConsulもあやしいかも。これ以外に、キャリアのDon Fredericoに思い当たる血筋がないし、キャリアのDon Vinoの母の父がこれ)

 遠祖たちは、根幹種牡馬みたいなものだから、どの馬をたどっても行き着く、という部分もあり、疑いをかけるには根拠が薄いんだけど…むしろ他馬と交配されたその子や孫の血統がアレなのかもしれない。あと母馬の姉妹関係とかも気になる。

 ハノーヴァーの交配は、かなり近親交配が目立つ…ドナホールなんて、へたすると一頭に3回くらい入っちゃう。健康によくなさそう…(ドナホールがキャリアだったらすごいことになるだろうけど、しかしまだ可能性は排除できないな。)

 もう少しキャリアが公表されたら、あやしい候補を絞れるのだけど。なお、ハノーヴァーの歴史的血統について興味のある人はこれをどうぞ。
 ついでに、まだ発表はないが、まずキャリアと思われるスタリオン。
 
・Contendro、Conteur、Continue、EmbassyⅠ…前三者は頭文字でわかるようにCalypsoⅡの子孫たち。EmbassyⅠはEライン出身だけど、祖母の父がCalypsoⅡ。
大種牡馬だけに、遺伝力が強いようです(しかも重宝されて、全兄弟とかもいっぱいいるみたい)(カリプソ2の父もキャリアだったみたいだが、これがまた遺伝力が強く、また重宝されてて…(´Д⊂グスン)…

|

2018年10月14日 (日)

ロンドンデリー、WFFS陽性発覚

 今春ブリーディング界で大騒ぎになったWFFS(温血種仔馬脆弱症候群)問題ですが、オランダやスウェーデンが国を挙げてスタリオンの検査を行ってウェブ上でその結果を公表したのに対し、徹頭徹尾無視を決め込んだドイツ、その有数のスタリオン・センターであるツェレ国立スタッドでこのほどようやっとWFFS検査が行われ、人気スタリオン・ロンドンデリー号(23歳、父ローリーズクルセイダー)をはじめとする5頭が陽性であることが発表されました。

 ツェレ国立スタッドは、国有としてはドイツ最大のハノーヴァー種のスタリオン・ステーションの由。キャリアが判明したなかで、ロンドンデリー号とロンドンタイム号は父子関係。さらに、デンマーク有数のスタリオン・センターであるブルーホース・スタッドが6月に自主検査でキャリアを公表した3頭のうちの一頭、ブルーホース・ロンドナー号はロンドンタイム号の産駒です。ロンドンデリー号は2013年度のハノーヴァー種スタリオン・オブ・ザ・イヤーで、当時の登録産駒数は2000頭を上回るということ。

 ツェレでキャリア判明したなかのもう一頭の有名種牡馬・ドン・フレデリコ号(21歳、父ドナホール)は2012年のハノーヴァー種スタリオン・オブ・ザ・イヤー。12年当時で登録された産駒は2500頭以上、そのなかにはヤングホース世界チャンピオンも含まれています。

 ハノーヴァー種のスタリオンは、何となく他種と隔絶されているような感じがあり、たとえばブルーホース・ザック号なら「デンマーク温血種だな」、ヴィヴァルディ号やアパッチ号なら「オランダ温血種だったっけ」とすぐ見当がつくのですが、ロンドンデリー号は名前は聞いたことがありながら、ハノーヴァー種とは知りませんでした。オランダで大人気のスタリオン・トトJr号は、父はオランダ温血種のトーティラスながら母方の血統はすべてハノーヴァーで、自身もハノーヴァー種。トラケナー種ほどではないけれど、ハノーヴァー種も相当血統仲のハノーヴァー濃度が高くないと、ハノーヴァーとして認定されないのかもしれません。

 今春、いろいろな馬種別にWFFSの罹患率を調べた結果を見たことがありますが、ハノーヴァーは目立って罹患率が高かったです。まあ、そのデータは調査した馬の絶対数がとても少なかったので、あまり参考にはならないかもしれませんが、言い方を変えれば、そんな少ない調査数だったにもかかわらず罹患馬が見つかったということで、実際はほんとうにハノーヴァー種のWFFSキャリア数は他と比べて多いのかもしれません。もしそうなら、上に述べたような閉鎖的な血統登録が原因かもしれませんね。

 くだんの表。

https://www.dehoefslag.nl/wp-content/uploads/2018/06/tabel-wffs.png

 ハノーヴァー(Hanoverian)と、ハノーヴァーと本質的には同じと言われるウェストファーレン(Westfalen)が1位、2位なのがどうもね…

 …今、過去記事を見直してみたら、WFFSキャリアのハノーヴァーのスタリオン、たしかに多い!しかも、ドイツは馬種ごとの管理組織や大規模なスタリオン・ステーションによる全頭検査は未施行で、以前に発覚したのは国外のスタリオン・ステーションやオーナーによる自己検査によるものだから、実際数はさらに多いはずと思われる。

・ロンドンデリー(父ローリーズクルセイダー、子ロンドンタイム、孫ブルーホース・ロンドナー)
・ドン・フレデリコ
・コネセール
・フォーシュアー
・トータルUS

 また、両親のいずれかがハノーヴァーというのが、

・ボッティチェリ(父がハノーヴァーのベネトンドリーム)
・ブルーホース・エミリオ(母がハノーヴァー、母の父ローリーズクルセイダー<ロンドンデリーと同じ>)

 ついでに、オルデンブルグ種も、かなり怪しい気がしてきた…

・ブルーホース・ヴェネツィアノ

 ドナホール(オルデンブルグ、しかし父はハノーヴァー、超有名スタリオン)が臭い…

・ボッティチェリ(母方と父方で、それぞれドナホール×Dunjaの娘の組み合わせ)
・コネセール(母の父ドナホール)
・フォーシュアー(5世代中にドナホール×3)
・ドン・フレデリコ(父ドナホール)
・ブルーホース・ヴェネツィアノ(父ドナホール)
・スコヴェンズ・ラファエル(祖父父ドナホール…ただし祖父ドン・シュフロは検査結果シロ)
・スプリングバンクⅡ(ラファエルの子、母祖父ドナホール…母父はデニーロ)(スプリングバンクはドナホールの3×4になるわけ。ついでにローディアマントも3×3)
・トータルUS(母がドナホールの3×3<サー・ドナホールとドン・シュフロ>)
・ハバンナ(父ヴィヴァルドの祖母父)

 ドナホールだらけ。それにしても煮詰まってるな…
 これでほんとにドナホールがクロとなったら、ドイツが頑として調査を拒んだ理由もわかるというもの。

 また、ホルスタイン種のエル・コロナはほぼ間違いなくキャリア。

・コス(ヘルデルラント種だけどオランダ温血種のスタリオンとして大成功、その父)
・エヴァーデール(祖母の父)
・アパッチ(祖母の祖父。アパッチは異父妹がキャリアだから、母系の遺伝のはず)
・ハバンナ(父ヴィヴァルドの母父モンテクリストの父。モンテクリスト、ヴィヴァルドもキャリアの疑い濃厚だな)

|

2018年7月27日 (金)

アパッチ号、キャリア発覚

 1回目のテストでノン・キャリアだと発表された後、産駒に次々とキャリアが見つかって、再検査を受けていたアパッチ号が、その結果、実はWFFSキャリアであることが裏付けられました。

 記事によると、アパッチの一度目の検査には血液サンプル(大多数の馬は毛髪サンプルだったけど)が用いられたが、今回は毛髪サンプルで検査が行われ、そして前回とは異なる結果が出たということ。前回の血液サンプルは、他の被験馬との取り違えがあったみたいにも読めるけど、検査の時にヒューマン・エラーが生じたとも書いてある。何にしろ、この時同じように血液サンプルで検査を受けた馬たちも、再検査を受けて、以前と同じ結果を得たとのこと。
 誤診断を出した研究所は大いに遺憾の意を表し、この誤診断から再検査の結果発表までの間にアパッチと交配を行ったブリーダーに対し、来春産まれた仔馬の無料WFFS診断を提供する、と言っている。
 それにしても、アパッチと言えば、オランダ1と言ってよいほどの人気スタリオンで、しかも一度はノンキャリアと言われていただけに、関係者の落胆は察するに余りあるな…

|

2018年7月13日 (金)

アパッチ号、実はキャリアか?

 オランダのみならずヨーロッパ全域でも人気の高いオランダ温血種のスタリオン・アパッチ号の産駒に次々とWFFSのキャリアが見つかり、実はアパッチ号―自身のWFFS検査ではシロだった―はキャリアではないかという疑いが強まっています。

 最初はインディアンロック号、次いでジョヴィアン号、それから2,3日前にアランゴ号、そして今日オールユーウォント号、いずれもアパッチの産駒。

 さらに、ユーロドレッサージュ他によると、ジョヴィアン号の母馬は検査したところキャリアではなかったこと、またアパッチの半妹がキャリアだとそのオーナーが発表したこと等を信ずるなら、アパッチがキャリアである可能性は非常に濃厚。

 KWPNは、アパッチとジョヴィアンの母馬とを再検査にかけることを発表。前にアパッチの検査に使ったサンプル(hairとある)は、どうやら今までに別の検査にも使われてきた古いもの(こうしたサンプルを常時管理しているサンプル・バンクみたいな機関があるのかな)だったらしく、そのせいで検査に誤りが出たのかも、とも言われている。果たしてそうなら、他の検査済みのスタリオンたちも、再び検査を受けなければならなくなる可能性が出て来る…

 もっとも、アパッチが事実キャリアだったものなら、エヴァーデールやトータルUSの例のように、実際にWFFSに罹患して産まれた仔馬の報告例がありそうなものではあるけれど。

|

2018年6月22日 (金)

ジョヴィアン号、キャリア発覚

 昨日、デンマーク有数のスタリオン・ステーションの経営者で、今年だか昨年からだかドイツにも支所を有するようになったアンドレアス・ヘルグストランドが、所有のスタリオンのWFFS検査―デンマーク本国のは終わってるから、今度はドイツ支所の―結果を公表しました。ジョヴィアン号(4歳、KWPN、父アパッチ、なおアパッチ自身はノンキャリア)、フォーシュアー号(3歳、ハノーヴァー、父ファイネスト、ハノーヴァー種は組織的検査を拒んでいるのでファイネストの黒白は不明)が、その結果、キャリアだと判明しました。

 ジョヴィアン号は3歳時のオランダ・チャンピオンで、4歳の今年はデンマーク温血種(DWB)のプレミアム・スタリオンになった、ヘルグストランドの若いスタリオンの中でも1,2を争うエース格。ユーロドレッサージュによれば「今年ドイツ、オランダ、デンマークでもっとも話題にされたスタリオン」「今年のブリーディング・シーズンにもっとも用いられたスタリオン」のうちの1頭で、だから、これは、ヘルグストランドにとってものすごくイタいこと。

 もう1頭のフォーシュアー号も、昨年のハノーヴァー・スタリオンのオークションで、最高額(36万ユーロ、4600万円くらい)をつけたという期待の新鋭。ユーロドレッサージュでも特集を組まれたくらいの馬、むぅ…

 ヘルグストランドは声明で、「他の馬種にも遺伝子異常(による障害)は存在するから、温血種にそれがあってもおかしくはない。これは病気と考えるべきではないが、ブリーダーはキャリア同士の交配を避けなければならない」という趣旨のことを述べていますが、それはたしかにそう。キャリアであっても、スポーツ・ホースとしては何の問題もないのだし、オーナーさえ納得するのなら、繁殖に使うこと(キャリア同士でさえなければ、致命的障害の起こる可能性はない)だって妨げない。ただ、ヘルグストランドをはじめスタリオン・ステーション経営者またホース・ディーラーのような、いわば血統を商品として市場に出して売りさばくのが商売の人種にとっては、「商品にちょっとでも傷がついた」のは、非常に多いライヴァルの手前も、たいへんに不利なことだと思われる。ヨーロッパでは、ブリーディング・スタリオンは競技会で活躍するスポーツ・ホースと同等かそれ以上に貴重視されていて、きわめて高額の商品とも、投資や取引の対象ともされており、コンテストやオークションも数多ければ、それに備えてのトレーニングにかける手間や資金も少なくない。要するに、ブリーディングの世界は、巨額の金が活発に動く非常に大きな取引市場…だからこそ、影響の大きい”風評被害”を何より避けたいわけで、これが、デンマークやドイツの各馬種協会が、今なお頑固にWFFS検査と結果の公表を拒み続けている理由となっているわけ。

|

2018年6月17日 (日)

ハノーヴァーのコネセール号、キャリア発覚

 ハノーヴァー種のコネセール号(11歳。発音自信なし^^;)がWFFSのキャリアだと発覚しました。

 この馬については知るところがなかったので、ちょっと調べてみたところ、3歳でスウェーデンの人気スタリオン第4位、4歳でパヴォ・カップ(オランダの若いスタリオンコンテスト)3位入賞、5歳で同6位入賞と、そうそうたるもの。6歳からは、カナダでスタッド・インしている。

(エヴァーデールにしろこのコネセールにしろ、ヨーロッパで大人気だったのに北米へ輸出され、その地でWFFSのキャリアだと判明する、という流れなのは気になる…。)

 このような経歴の持ち主なので、産駒も非常な数に上るのは当然で、影響するところも決して小さくないはずだけど、それでも黙ったままなのかな、ドイツのハノーヴァー協会…

|

2018年6月15日 (金)

WFFS続報10

 WFFSについて等閑視を決め込んでいるドイツのハノーヴァー馬種協会ですが、北米のハノーヴァー馬種協会は今日「2019年度のスタッドブックには、スタリオンのWFFSのテスト結果を併記する」との声明を出しました。と言うと、本家のドイツに比べたいへん立派なようですが、これが必ずしもそうではない。
 と言うのも、声明によると、スタリオンのWFFSの遺伝子検査はあくまで”recommend(推奨)”であり、”mandatory(義務)”とはしていないから。そのくせ、スタリオンのオーナーに対しては、2019年初頭に検査結果の報告が”reqwired(要求される)”と言っているのが何とも不可解…また、結果を「陰性」「陽性」「未検査」の3つで公表すると言っているのも、特に「未検査」を公表するというのが、何だかオーナーひとりに責任を負わせるようで、組織としては少々無責任に思われる。

 (ユーロドレッサージュのこの記事をFBから転載しようと思ったけど、画像がWFFSで死んだ仔馬の無惨な姿なので止めました^^;)

 私がこんな記事をいちいち記録しているのは、WFFSに関心があるのはもちろんだけど、それに対する国や人の反応が興味深いから…すぐに検査・公表を導入する国あり(オランダ、スウェーデン。オランダではオランダ温血種協会を挙げて検査を行い、スタリオンに十数頭のキャリアが確認されている)、書面で注意をうながすにとどまる国あり(デンマーク。ブルーホースは早々と自主的に検査を行い、その結果スタリオン11頭中に3頭のキャリアを発見。その半月あまり後、ヘルグストランドが自主検査の結果を一部公表、人気スタリオン2頭にキャリア発覚)、いっさい何もしない国あり(ドイツ。ハノーヴァーもオルデンブルクもラインランダーも、だからまったく罹患率がわからない)。今年12月の会議で話し合いますという世界的組織あり(WBFSH←FEIの兄弟機関)。所有のスタリオンについていっさい検査しない(もしくは結果公表しない)有名スタリオン・ステーションあり(ドイツのショッケモール、トーティラスを繋養しているので有名)。

 歳月が過ぎれば、今の渦中の動向について、あの時はまだ状況が明らかでなかったからとか、一時的に状況を誤解していたからとか、いろんな言い訳が出て来るでしょう。あるいは事態が結局初め恐れていたほどの大事に至らず、「ほら見ろ、何もしなくて正解だった」との意見が出て来ることだって考えられる(実際には、よその人が一生懸命働いてくれたから「大事でない」と判明したのであり、手を束ねて見ていた傍観者には何の手柄も先見の明もありはしないのだけど)。その時にはそれを聞く人も、昔のこととして、何となく納得してしまうもの。が、現在進行形でいろいろな事実が表に表れて来、心配する声があちこちから聞こえてきて、また実際に対策を打ち出すものも出て来る中、それを現に目の当たりにしながら、それでもいくつかの国・組織は腰を上げようとしなかったという事実は、これはいまハッキリ記録して、将来の戒めのため残しておくべきだと思う。「巧遅より拙速を尊ぶ」ということばは、このような見通し不鮮明な状況にこそ当てはまるべき。経費・労力をかけて最終的に何でもないとわかれば、「もったいなかった」だけで済むし、一見は骨折り損に見えても、そのじつ安心という果実をすみやかに入手するという大きな利を得ることができ、かつ「あそこは迅速に事に対応してくれる」という信頼感をも周囲に醸成できる。が、反対に、経費・労力を惜しんだあげく最終的に最悪の結果が判明した日には、まったく目も当てられない。―そうなってからでは、「もったいなかったから」はおろか、言い訳を百出したところで通るものではない。さらに、それまでに稼いできた周囲の信頼さえ失って、一朝味方変じて敵となり、以後は何をやっても疑いや軽蔑の目で見られることにもなりかねまい。

|

2018年6月13日 (水)

WFFS続報9

 今まではオランダ温血種、デンマーク温血種、ハノーヴァーなど主にドレッサージュ・スポーツでメジャーな血統でばかり話題になっていたWFFSですが、今度は馬車競技のエースとして知られるヘルデルラント種のあいだでも、この遺伝病が蔓延の恐れを呈していることが明らかになりました。
 ヘルデルラントはオランダ原産の馬で、馬車用馬として作出された馬種ですが、オランダ温血種の作出にも大いに利用された歴史があります。今でも一部のヘルデルラントはドレッサージュ界で活躍しているのですが、今回キャリアだとわかったのは、まずいことにそのドレッサージュ用スタリオンとして大いに人気を博していたコス号。コス号自身は2年前に死亡していますが、おそらく貯蔵されていた凍結精液の検査でわかったのでしょう。コス号の息子のスタリオン2頭、孫にあたるスタリオン1頭も、キャリアであることが明らかになっています(その息子2頭のうち1頭であるウィルソン号は、去年末日本に買われているそうな)。
 アデリンデ・コーネリセンが騎乗して、スタリオン・ショーでよく入賞しているヘンキー号(6歳)は、このコス号の孫ですが、幸いに彼はノンキャリアでした。なお、彼の父―コス号の息子―のアレクサンドロP号も、ノンキャリアだとわかっています。
 コス号はヘルデルラント種のスタリオンとして傑出した存在だったため、彼の血を引く馬はきわめて多い由。おかげでヘルデルラントのブリーダーたちは大いに難儀している由ですが、コス号にしろそのキャリアの息子たちにしろ、オランダ温血種のライセンスを有していた。他の馬種のブリーダーだってうかうかしていられない…

|

2018年6月 9日 (土)

WFFS続報8

 WBFSH(World Breeding Federation for Sport Horses)、―こんな組織があるとは知らなかったけど、調べてみると、FEIの兄弟機構か何かで、毎年若いスタリオンの世界選手権を主催してるとこ、大御所のひとつですな―、が、とうとうWFFSに関する声明を発表したと、今日のユーロドレッサージュに記事が出ていました。

 この声明に対し、ユーロドレッサージュの記事の筆者は、大いに呆れ果てているのですが、それも無理はない。WFFSの蔓延の恐れに対して「ただちにパニックを起こす必要はない」というのはともかく、目下これほど問題視されているものを「12月にハンガリーで開催される連盟総会で議論する予定」とか、馬種のライセンスの管理組織やスタリオンのオーナーに対し、検査を要請するのでなく「生産者に対して最善の処置をアドバイスしましょう」とか、危機意識のカケラもうかがわれない内容なのだから…

 記事の筆者はさらに、この声明が、今だにWFFS問題に関して無視を決め込んでいるドイツの馬産界の態度に対してまったく触れていないこと、繁殖牝馬のオーナーが自腹を切って自分の馬のほうを検査しなくてはならないはめになっていることを指摘しています(WFFSは雄雌からひとつずつ子に受け継がれる遺伝子が両方とも異常だった場合に起こる。片方だけが異常だと、キャリアと呼ばれる。キャリア同士の配合で25%の確率で発症するから、スタリオンがキャリアであるとわかれば、牝馬のオーナーは配合を避けるだけでよい。が、わからない時は、牝馬のほうを検査して、遺伝子の異常の有無を調べなくてはならない)。

 いやしくも国際機関でありながら、はなはだやる気のない声明だし、だいたい現状がわかっているかさえ疑わしいと感じられる。悪く勘ぐれば、この機関は、ドイツの有力なスタリオン・オーナーたちに媚びているのだし、12月までにはこのゴタゴタも自然消滅するだろうとタカをくくっているのだし、またそうするうちには個人や各スタリオン・ステーションの自主的検査で(自分らは何も手を下さずとも)たいがいのキャリアは明らかになるだろうから待ってればいいと思っているのだろうな…

|

より以前の記事一覧